路線バスを諦めるな! 車両や営業所の「空きスペース」を有効活用すれば、稼ぐチャンスはまだまだある【連載】ホンネだらけの公共交通論(5)

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公共交通事業者は固定観念をなくし、未来のあるべき姿を整理し、それを実現する方法を考えるべきだ。

既存施設の活用とそのアプローチ

スーパーマーケットのイメージ(画像:写真AC)
スーパーマーケットのイメージ(画像:写真AC)

 一方、研究室では2022年11月から12月にかけて、同じ東急グループである東急バス(東京都目黒区)の基幹営業所のひとつである虹が丘営業所(神奈川県川崎市)を地域交流促進の拠点として運営する社会実験を行った。

 コロナ禍やバスドライバーの減少による路線バス事業の縮小の打開策として、営業所の空きスペースを有効活用し、地域交流拠点として新たな貸与収入の可能性を検討した。

・合唱教室
・編み物教室
・アロマストーン教室
・鉄道模型教室

などを展開し、地域住民から評価を得た。地域住民のなかには、特技の指導や地域との交流の場を求めている人も多く、実際に“地域のランドマーク”である路線バスの営業所を借りたいという声も多かった。

 虹が丘営業所では、沿線の製麺所から仕入れた生麺を販売したり、バスを使ってパンを運んだりもしている。つまり、バスや営業所という既存のスペースをいかに活用するかという、これまでにない斬新な試みなのである。

 筆者による上記ふたつの研究は、通勤型鉄道車両や路線バスの営業所といった既存の公共交通インフラで、ほとんど支出することなく、利益を追求できる新しい社会システムの設計でもある。

 つまり、モータリゼーションとともに、コロナ禍のテレワーク推進で安定した定期券収入を失った公共交通事業者の経営革新に資する画期的な内容として、各方面から評価されたのである。

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