率直に問う 日産・ホンダは本当に「EV戦争」を生き残れるのか? テスラ技術&中国の量産効果に対抗できるのか?
BEVが減速した理由
半年前まで活況を呈していた電気自動車(EV。バッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の総称)市場は成長を続けているが、EVの成長は世界的に鈍化しており、手頃な価格のハイブリッド車(HV)の成長が相対的に加速している。
この現状は驚くことではない。各国の政策と
「アーリーアダプター(早期導入者。市場全体の13.5%を占め、トレンドに敏感で、自ら情報収集の意思決定を行う層)」
によって形成されてきた初期のEV市場は、キャズム(深い溝)に近づいている。キャズムが克服されれば、EV市場は実需主導の普及期に入り、再加速するだろう。
しかし、キャズムは深く、乗り越えるのは容易ではない。補助金があってもBEVはまだ高価であり、充電インフラが不十分なため消費者は敬遠している。
テスラが仕掛けた安売り合戦の結果、各社が体力を消耗するかBEV戦略を修正する一方、ハーツのようなフリート顧客(レンタルやリースをする大企業の顧客)は、再販価格の低下による減価償却費の増加(新車が安くなれば中古車価格も安くなる)を嫌ってBEVを大量に放出する。
さらに悪いことに、脱炭素の象徴であるBEVが“政争の具”となり、BEVシフトを推進する欧米の政策が後手に回り、自動車貿易戦争が再燃し、欧米は安価な中国製EVを高関税で締め出さざるを得なくなっている。
そのため、BEVの販売が伸び悩み、HVが伸びるという状況は長期化する可能性があり、エンジン車の開発力を持たないテスラをはじめとする新興BEV企業にとっては苦しい時期となる。一方、HVなどエンジン車を販売する比亜迪(BYD)を含む自動車会社、特にBEVの開発を先送りしてきた日本の自動車各社にとっては、追い上げのチャンスとなる。
こうしたなか、3月15日、日産とホンダは「覚書」の締結を発表した。覚書には複数の意味があるが、共同記者会見の内容からすると、今回は単に
「協業の可能性を正確に検討するために、機密情報を共有する」
つまり
「まだ何も決まっていないし、何も決まらない可能性もある」
だった。なお、資本提携について両社は明確に否定した。
では、激化する自動車の電動化戦争で、日産とホンダは生き残ることができるのだろうか。さまざまな角度から検証してみよう。