率直に問う 日産・ホンダは本当に「EV戦争」を生き残れるのか? テスラ技術&中国の量産効果に対抗できるのか?

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3月15日、日産とホンダは覚書を締結したと発表した。激化する電動化戦争で両社は生き残れるのか。さまざまな角度から検証する。

EV戦争での生存能力

シトロエン「アミ」。全長2410mm、全幅1390mm、全高1520mmで、欧州連合(EU)では日本の軽自動車に相当する「クワドリシクル」のカテゴリーに属し、最高速度は45km/hに制限されている。フランスでは14歳から、他のほとんどの欧州諸国では16歳から運転免許なしで運転できる(画像:アイベックス73)
シトロエン「アミ」。全長2410mm、全幅1390mm、全高1520mmで、欧州連合(EU)では日本の軽自動車に相当する「クワドリシクル」のカテゴリーに属し、最高速度は45km/hに制限されている。フランスでは14歳から、他のほとんどの欧州諸国では16歳から運転免許なしで運転できる(画像:アイベックス73)

 先進運転支援システム(ADAS)の搭載を望む消費者は多く、自動車会社だけでなく、テック企業や新興企業も参入している。今回の記者会見では、競合各社のソフトウエア開発スピードに対する危機感が明らかにされた。これは、協業によって期待される成果のひとつである。

 それにしても、具体性のない記者会見に何の意味があったのか。ロイターは、

「独自のEV技術を開発するために巨額の予算を投じる努力よりも、テスラの技術(ギガプレス)や、中国のEV業界の優れた量産効果に対抗できる標準化・共有化を始めるべきだ」

と考える投資家からの圧力が影響したと分析している。

 冒頭で述べたように、

・政策立案者の理想
・消費者の不信

の“綱引き”であるEV市場の近未来を予測することは難しいが、長期的にはEV(BEV+PHV)が主流になることは間違いない。日産やホンダのように「BEV一本化」を維持するにしても、トヨタ連合のように「多様な選択肢」を提供するにしても、それは単に商品戦略である。

 どのような商品戦略であれ、「成熟した消費者が「初期品質」だけでなく、日本車の優れた「耐久品質」を重視する」ことは共通している。とはいえ、日産やホンダが生き残れるかどうかは、そうした技術力よりも政治力や経済力で決まるだろう。そのためには

「1+1 大なりイコール 3」

を実現する具体的な協業内容を数多く見つける必要がある。

 日産は、提携先である三菱が開発した軽規格BEV「ekクロス」をベースとした「サクラ」を約233万~294万円で販売する。航続距離は180kmで、市街地走行には十分だ。この軽規格BEVは低価格で、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国やインド、中国の都市部や農村部でも需要があるだろう。これにADASを組み合わせれば、欧州での市街地走行需要を喚起できるだろう。

 実際、シトロエンは2020年4月に2座席の小型シティコミューターBEV「アミ」を発売し、欧州5か国で2万台以上の受注を獲得した。外寸は日本の軽規格より二回りほど小さく、航続距離は70kmで、英国での販売価格は7695ポンド(約122万円)だった。

 三菱の軽規格BEVプラットホームと日産の全固体電池の低コスト版を組み合わせ、ホンダがインド工場で安く製造し、中国や欧州に輸出する。そんな夢のような協業プロジェクトをぜひ実現してほしい。

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