なぜ岩手県は優秀な人材を輩出し続けるのか? 大谷翔平を育んだ「旧水沢市」で考える【連載】移動と文化の交差点(3)
大谷翔平だけでなく、近年、岩手県は人材輩出地域として注目されている。その理由を水沢で考えてみた。
水沢駅が抱える地域の課題
冒頭に書いた吉小路は水沢駅から徒歩15分ほどのところにある。水沢駅には有人の観光案内所がなくなり、待合室は人々のコミュニティースペースになっている。
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このエリアでは、すでに水沢江刺駅が主役であり、コンクリート造平屋建ての水沢駅は脇役である。駅前ロータリーにある、2023年の大谷翔平選手のMVP受賞を祝う飾り塔だけが、ここが彼の故郷であることを伺わせている。水沢駅には彼のポスターが1枚だけあった。
水沢駅はこぢんまりとした平屋の駅舎で、1890(明治23)年に開業した。水沢江刺駅は東北新幹線開業時(1982〈昭和57〉年)にはなかったが、1985年に新花巻駅と同時に開業。この時点で、水沢駅と水沢江刺の主客が入れ替わった。
水沢駅の1日の乗車人員は減少傾向にあるとはいえ、水沢江刺駅の約700人を超える約1500人だ。そのため、同駅が地域の公共交通機関として依然として重要な位置を占めていることがわかる。
コロナ禍もあって、駅前通りは閑散としており、シャッターを閉めた店も少なくない。駅前通りの突き当たりにあった複合商業施設「メイプル」(旧ジャスコ)も2023年3月に閉店した。ちょうど筆者が訪れたときには、1階で大規模なひな祭り展が開催されていたが、建物の老朽化は激しかった。これは水沢の商業地区に限ったことではなく、地方都市ではよく見られる。