宇都宮LRTに便乗? 和歌山市「LRT導入検討」は、ジリ貧続く人口減“鉄冷え”の街を再生できるのか
LRT導入の可能性
和歌山県和歌山市が2024年度、次世代型路面電車(LRT)の導入調査に入る。栃木県宇都宮市のLRT「ライトライン」成功に触発されたためで、“鉄冷え”の街にLRTは走るのか。
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「(LRT導入で)宇都宮市に活力が出てきた感じがする。和歌山市としては市中心部への導入を目指して調査を進め、採算面など実現可能性を検討したい」
和歌山市の尾花正啓(まさひろ)市長は記者会見で、宇都宮市のライトラインが順調な滑り出しを見せていることに触れ、LRTの導入調査に入る考えを明らかにした。
和歌山市は2015年度、庁内にプロジェクトチームを設け、LRTやバス高速輸送システム(BRT)の導入を検討した。その後、導入に向けた具体的な動きは出なかったが、今度はLRTに絞って導入を検討する考えで、2024年度当初予算案に重点施策と明記した。
けやき大通りを候補に可能性を模索
和歌山市には鉄道の拠点駅として
・JR和歌山駅(美園町)
・南海電鉄和歌山市駅(西蔵前)
がある。国土交通省によると、1日当たりの平均乗降客数は2022年度で
・和歌山駅:約2万8000人
・和歌山市駅:約1万3000人
だった。
しかし、両駅間は約3km離れ、歩いて移動するのに遠すぎる。両駅を結ぶ鉄道としてはJR西日本の紀勢本線支線があるが、運行本数は朝夕30分に1本、日中1時間に1本。市中心部を経由しないこともあり、多くの市民が路線バスやタクシーで移動している。
尾花市長は市中心部を経由して両駅間を結ぶルートを検討候補に挙げた。和歌山駅からメインストリートのけやき大通りを西進し、市中心部で北上して和歌山市駅に向かえば、中間に官庁街や観光名所の和歌山城がある。1971(昭和46)年まで南海電鉄の路面電車が走っており、官庁街を訪れる市民や和歌山城へ向かう観光客の利用が想定できる。
路線バスやタクシー、電車は運転手不足から将来の便数維持に不安がつきまとう。和歌山市はその解決策としてLRTに期待しているわけだが、採算に見合う需要があるか、事業者を確保できるかどうかなど多くの課題が残る。和歌山市交通政策課は
「実現時期は明言できないが、宇都宮の事例をさらに詳しく研究したい」
と話した。