なぜ高齢者は運転免許証の「自主返納」をためらうのか? 交通問題の深掘りで見えてきた痛ましい現実とは

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近年、交通事故のなかでも特に高齢者の自動車事故が注目されている。運転免許証の自主返納を促す動きもあるが、これで本当に問題は解決するのだろうか。

若者から見たドライバー不足の背景

 なぜバスやタクシーのドライバーの担い手が少ないのか。ある男子高校生の就職活動を追った。大阪市に住む高校3年生の佐藤洋介さん(仮名、18歳)は、子どもの頃から乗り物が大好きだった。大人になったらバスドライバーになるのが夢だった彼は、就職活動の一環としてバスドライバーについて調べてみた。

 ところが、思わぬ現実を知ることになる。2021年の厚生労働省のデータによると、路線バスのドライバーの年収は約400万円。タクシードライバーの平均年収は280万円だ。全産業の平均489万円と比べると、かなり低い数字である。

「人の命を預かる責任のある仕事なのに、賃金が安いなんて」

と佐藤さんはがくぜんとした。

 また、バスドライバーに必要な大型二種免許は、MTの普通免許を所持していないと取得できず、50万円近い追加費用がかかることも知った。タクシーは二種免許の合格率が35%と一般試験よりハードルが高い。

 バスもタクシーも交代制で勤務時間が不規則で、完全土日の休みも期待できない。佐藤さんは悩んだ末、結局バスドライバーを諦め、一般企業に就職する道を選んだ。

 若者にとってメリットが少ないことも、バスやタクシーのドライバーが減っている一因だろう。

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