「免許を返納しろ」 高齢ドライバーをネット上で攻撃しても、事故リスクはあまり減らないワケ

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高齢ドライバーに「免許を返納せよ」と騒ぎ立てても、事故リスクはあまり下がらないかもしれない。いったいなぜか。

過熱する「免許返納」論議

高齢ドライバーのイメージ(画像:写真AC)
高齢ドライバーのイメージ(画像:写真AC)

 筆者(島崎敢、心理学者)は当媒体で前回、「アクセル・ブレーキ踏み間違い事故 その原因を「人間のせい」にしている限り、問題は永遠に解決しない」(2023年11月22日配信)という記事を書いた。

 今回は繰り返される踏み間違い事故報道を受けて、高齢ドライバーに「免許を返納せよ」と騒ぎ立てても、事故リスクはあまり下がらないかもしれないということを書いてみる。

 残念ながら加齢にともなって人間の心身機能は衰える。この事実を単純に捉えて、「高齢者は免許を返納せよ」という主張を持つ人が多いようだが、話はそれほどシンプルではない。

 加齢による機能低下は個人差が大きい。例えば80歳でも極めて元気な人もいれば、60代前半でかなり衰えている人もいる。小学生の発達に大きな個人差があることは、多くの人が実感していると思うが、生まれて10年程度の子どもたちでもあれだけの個人差があるのだ。高齢者は生きてきた時間が長く、その間の

・病気
・運動
・栄養状態
・経験

などもバラバラなので、個人差はさらに大きくなる。

 また「心身機能」と一口にいっても実に多様だ。視覚や聴覚などの感覚器官、記憶や情報処理などに関わる認知機能、手足の筋力や柔軟性などの運動能力などがあり、これらの多様な機能が一様に衰えるのではない。

 ある人は目が見えづらくなり、別の人は記憶が曖昧になり、またある人は身体が硬くなるといったように、機能低下の発現場所にも多くのバリエーションがある。そして、運転はこれらの多様な機能を組み合わせて行う複雑なタスクである。

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