元海上自衛官が解説! 「無人軍艦」が全く実用化されない理由 技術的問題ないのになぜか
無人軍艦は全く実用化されていないし、普及していない。技術的な困難はないにもかかわらず、なぜなのだろうか。
「海上交通」に関する問題

三つ目は「海上交通」に関する問題である。
無人軍艦には、責任者の不在と救難義務を果たせないという問題がある。責任者の不在という問題を解決するのは厄介だ。
航海自体は機械化できる。見張りと運航はすでに自動化できている。ヒューマンエラーがない分、むしろ安全だ。しかし、責任機能は機械化できない。誰が海上安全の責任を負うのかは決まっていない。この点でも、従来の船舶運航とは状況が異なる。
救難も自動化の見通しは立っていない。船舶には救難義務がある。これは自動車のように衝突に巻き込まれた人を救護する義務とは異なる。遭難した船舶、墜落した飛行機、漂流する落水者、さらには着水した有人宇宙船への救難の義務も負う。
無人軍艦がこの義務を果たすことはできない。救難義務は無人艦船には課せられないと主張する余地はある。厳密にいえば、救難義務は「すべての船長」に課せられている。ただ、口が裂けてもそうはいえない。
無人軍艦は海軍士官の指揮を受けている建前である。そして軍艦として国家を代表するというメンツからも厳しい。それを実行に移すのは難しい。落水者を引き上げたり、被救難者に食料や医療を提供したり、火災船に消火隊を派遣したりすることはできない。
これは無人化の矛盾である。商船以上に救難義務を果たさなければならないと主張する立場にある。それなのに、その義務は果たせないのだ。