元海上自衛官が解説! 「無人軍艦」が全く実用化されない理由 技術的問題ないのになぜか
「法律」に関する問題

ひとつ目は、「法律」に関する問題である。
無人軍艦は、現時点では軍艦の要件を満たしているとはいい切れない。海軍士官が指揮するという共通認識もない。このため、無人船舶が建造されたとしても、軍艦として使用することは難しい。
軍艦とは、海上で戦争に従事し公権力を行使する船舶であり、
「単に戦闘をするだけの船」
ではない。船舶の臨検(立ち入り検査)や拿捕(だほ)も実施する。そのために独特の地位を与えられている。他国の艦船を攻撃しても、沈めても、拿捕しても海賊行為とはならない。また、どこの海でも、たとえ他国の領海でも他国の軍隊や官憲の支配は受けない。
ただし、そのためには軍艦の条件を満たす必要がある。そのひとつが
「公開した名簿に記載してある正規の海軍士官の指揮を受けること」
である。この条件は無人艦船では満たしがたい。現に艦長は座乗してはいないからである。そして遠隔操作や遠隔管理は指揮といえるか微妙である。現段階では共通認識はできていない。
したがって、技術的には可能だが、無人艦船を無人軍艦として使用することは難しい。ただ、軍艦としては完璧ではない。例えば、第三国の商船の停船である。技術的には砲撃などで強要することは可能だ。しかし、
「無人艦船は軍艦の要件を満たさない。だから拿捕の権利を持たない。違法な拘束である」
との反論も出てくる可能性もある。
細かいことをいえば、“体当たり”も難しくなる。海軍士官による指揮の問題とは離れるが、これも無視できない問題である。衝突とは、武器を使わずに他国の艦船に対抗する手段である。1975年のタラ戦争(アイスランドと主に英国との間で起こった紛争)では、アイスランドの巡視船は自国の権利を守るため、自分たちの3倍以上も大きい英国軍艦に沈没覚悟で衝突を仕掛けていった。
しかし、これは実施側の乗員も危険にさらすため、正当な戦法である。無人艦の使用は一方的な危害であり、大砲を撃つのと変わらないからだ。