元海上自衛官が解説! 「無人軍艦」が全く実用化されない理由 技術的問題ないのになぜか
無人軍艦は全く実用化されていないし、普及していない。技術的な困難はないにもかかわらず、なぜなのだろうか。
「保安」に関する問題

ふたつ目は、「保安」に関する問題である。
無人の状態では、他国の軍隊や官憲の侵入や海賊による乗っ取りに対処できない。軍艦には不可侵権がある。これはすでに述べたとおりだ。裏を返せば、軍艦は奪われてもならない。
何よりも、軍艦は“領土の延長”である。軍艦を奪われることは神聖な領土を奪われることと変わらない。軍艦は何があっても渡してはならない。実際、軍艦の不可侵権を侵害することは、主権の侵害とほぼ同じである。
したがって、軍艦には徹底的に抵抗しなければならない。例えば、友好国に入港中であっても、官憲による犯罪捜査は許されない。逃走中の犯罪者が隙を見て軍艦に侵入しても、追跡中の警察は立ち入りを拒否される。強引に侵入すれば、小銃や拳銃を発砲してでも押しとどめざるを得ない。
しかし、無人軍艦ではそのような実力行使はできない。他国の海軍や海賊、官憲が乗り込んできても、乗員は抵抗できない。間に合えば遠隔操作で自沈するしかない。これも軍艦としては不都合である。軍艦を奪われるという不名誉なことでありながら、それを無抵抗で受け入れた形である。
軍艦ではないが、同様の例はすでに起きている。2016年末、南シナ海で米海軍の水中無人機が中国に回収された件だ。スロカムグライダーと呼ばれる小型の原始的な水中グライダーが揚収(水中に沈んでいるものや水面に浮かんでいるものを引き上げて回収すること)され、世界中で報道された。