「EV全振り」しない日本車メーカーは正しかった! しかし“EV信者”とのコミュニケーションは破綻寸前、今後どうするのか?

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テスラの不振が日本車の明るい未来を暗示していると考えるのは楽観的ではない。この状況をどう考えるべきか。

テスラ株の停滞と日本車メーカーの未来

男女20歳以上~60歳以下自動車保有ユーザー2万2166人を対象に行った調査結果(画像:リブ・コンサルティング)
男女20歳以上~60歳以下自動車保有ユーザー2万2166人を対象に行った調査結果(画像:リブ・コンサルティング)

 では、私たちはこの状況をどう考えるべきなのか。テスラの業績の停滞が日本車の明るい未来をそのまま暗示していると考えてよいのかというと、そう楽観できる話ではないのは確かだ。

 テスラの株価は、2023年初頭頃までの圧倒的な市場期待が後退して落ち着いたが、他メーカーにはない成長を続けており、自動運転への投資や充電方法のデファクトスタンダードを取るなど、今後大きく化ける可能性がある。EV全体では、成長率は鈍化しているものの年率31%で成長しており、中国の比亜迪(BYD)など強力なライバルも存在する。

 日本車メーカーがこうした挑戦に何らかの形で対処できなければ、非常にまずい状況に追い込まれることは明らかだ。

 一方、ここからが重要なのだが、一部の“EV信者”が数年来主張してきたように、EVに全リソースを割かず、HVを含む多様な選択肢を残すという日本車メーカーの戦略は、少なくとも「現時点」では正しかったことが明らかになった。とかく「全否定合戦」になりがちな日本において、この

・「現時点」では日本車メーカーの戦略は正しかったといえる
・長期的には今が正念場であり、EVシフトに対してベストなタイミングでベストな打ち手を打っていけるかが命運を左右する

という一見相反するように見える現象に対して、「どちらも当然正しい」という当たり前の視点を共有することから始めなければならないといえる。

「先進事例が大好きで、それ以外は認めない」というEV信者の情報を取り入れることは非常に重要だが、それによって日本車メーカーの“勝ち筋”が損なわれるようなことがあってはならない。

 そのためには、非常に高度なバランス感覚のかじ取りが必要だが、どうすれば実現できるのだろうか。筆者(倉本圭造、経営コンサルタント)は読者に、その方法を考えてもらいたいと思う。

 本稿では、多様な視点からの情報共有基盤を構築するために必要な、ある種のコミュニケーションギャップを埋める方法について、次のような提案をしたい。

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