「完全なる日本外し」 インドネシア“MRT東西線”はなぜ具体化されないのか? 暗躍するイギリスの狡猾さとは
MRT東西線について協力を推進する――。もう、いい加減聞き飽きたというのが関係者の本音ではないだろうか。
DGR反発の陰にヨーロッパ

しかし、である。なんと、わずかこの数日後、DGRが異議を申し立ててきたというのである。監督者たる運輸大臣が居合わせながらの署名に関わらずだ。
下部組織のDGRが運輸省本体に抵抗するとはにわかには信じがたいが、それほどまでにDGRによる鉄道建設が利権の塊になっているということである。そして、背後に見え隠れするのは、やはり
「ヨーロッパの存在」
だ。信号、通信、電力関係等、地上側はドイツを始めとしたヨーロッパにやらせなければならないという旧来のしがらみが根強く残っている。当然ながら日本側にも衝撃が走った。しかし、先の首脳会談の結果から見るに、この問題は解決していない。一度署名したものをほごにするとは、本来考えられないものだ。
現場レベルで解決できないのであれば、トップ同士で議論するしかない。首脳会談という機会があり、まして今回の日本・ASEAN友好協力50周年特別首脳会議では、岸田首相とジョコウィ大統領は共同議長を務めていたのだから、両者の話し合う時間など、十分にあったはずである。
しかし、出てきたのは、
「MRT東西線についても協力を推進する」
という、耳にタコができるような言葉である。まさか、東西線事業を巡る状況が政府中枢まで上がっていないとは信じたくもないが、こんなうわべの表現にとどめてもらいたくはなかった。
もっとも、お題目の如く、何度も繰り返されているトピックは東西線のみに限ったことではなく、ASEANにおける相対的な日本の存在感低下をまじまじと見せつけられたような気がした。