入社すれば「300万円の車」プレゼント! 1980年代、大阪の企業がこんな突飛なことをやらかしたワケ

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平成初期、クルマを所有することが当時の若者にとってステータスであり、夢だった。

異色の内定者獲得手段

古いクルマのイメージ(画像:写真AC)
古いクルマのイメージ(画像:写真AC)

 バブル景気の頃、人手不足に悩む企業は新卒者を獲得するためにあらゆる手段を講じた。説明会に参加するだけで「交通費」という名目でお金がもらえるのは当たり前だった。また、入社を誓約すればさまざまなプレゼントを用意して学生を集めようとする企業も少なくなかった。

 なかでも注目されたのは、1989(平成元)年に大阪のある企業が行った、「入社をすれば300万円までのクルマをプレゼントする」という試みだ。この新規採用スキームの背景にあった、現代とは異なるクルマの所有価値について考えてみたい。

 まず、バブル景気の新入社員募集策の盛り上がりを簡単に説明したい。当時の新聞や週刊誌には、企業サイドによるさまざまな奇策が紹介されていた。そのいくつかを紹介しよう。

・内定した学生を伊豆や軽井沢に連れて行き、宴会を開いて拘束する
・内定者をホテルに集めて宴会を開き、その場で服を没収し、動き回れないようにダボダボのジャージーに着替えさせる
・スーツ代として10万円を渡し、その場で他社に内定辞退の電話をかけさせる
・担当者は内定者に付き添い、「変な気(内定辞退)はおこなさいように」とささやき続ける

「脅し」も他社の内定辞退の誘導に使われたが、より効果的だったのは金品の贈与だった。そんな時代にあっても、入社を決めただけでクルマをプレゼントするという施策は強いインパクトがあった。

 それは単に金額が大きかったからではない。当時の若者にとって、クルマを持つことはステータスであり、夢だったからだ。

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