入社すれば「300万円の車」プレゼント! 1980年代、大阪の企業がこんな突飛なことをやらかしたワケ
デートにおけるクルマの重要性

クルマの人気によって、若者の間では
「クルマを持っていると女性にモテる」
という風潮が強まった。クルマを所有することは、自分の富を誇示する簡単な方法だったからだ。したがって、高価なクルマであればあるほど、所有者は優越感に浸ることができた。
この風潮はメディアを通じて広く流布した。当時、若者にとって恋愛は非常に重要だった。そのため、クルマの所有は恋愛テクニックと結びつけられ、
「クルマがなければデートもできない」
という意識が広まった。
例えば、1980年代の大手青年誌『スコラ』1988年1月28日号では、女子大生200人を対象に付き合う男性の条件を調査したところ、「クルマを持っていること」と答えた人が26%もいた。これを根拠に、記事では
「クルマを持っていなかったら、無条件で4回に1回はフラれる」
とまで書いている。真偽のほどは定かではないが、このような記事が現実のものとして受け取られるほど、クルマ所有の重要性は高かったのである。
しかも、当時最先端のデートスポットとしてメディアで取り上げられることの多かった東京の湾岸エリアは、公共交通機関がほとんどなく、クルマがなければアクセスすることが難しかった。クルマを持つか持たないかで、行動範囲が大きく変わってしまう。それが若者のクルマ所有欲をあおったことは間違いない。
しかし、アルバイトの時給が上がっていた時代でも、若者がクルマを買うのは難しかった。外車など夢のまた夢だった。せいぜい最低クラスの国産車しか買えなかった。やっとの思いでクルマを手に入れても、仕事が忙しくて維持費や駐車場代が払えない人が多かった。だから、実際にはバブル期でも高級外車を所有していたのは一部の富裕層だけだった。あとは親がもともと東京に住んでいた人たちだけだった。
そんな夢と現実のギャップがあったからこそ、
「入社すれば300万円までのクルマをプレゼントします」
というアナウンスは絶大なインパクトを与えたのである。