リニア新幹線工事 川勝知事の発言がどんなに奇異でも、早期着工を目指すべきでない理由

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リニア中央新幹線の開業時期が不透明になってきた。2023年12月、JR東海は開業時期を「2027年」から「2027年以降」に変更することを決定し、国土交通省の認可を得た。公共事業を実施するにあたっては、反対派の声にも耳を傾け、それがどんなに奇矯なものであっても説得する努力が不可欠である。

公共事業の課題と犠牲

成田空港(画像:写真AC)
成田空港(画像:写真AC)

 とはいえ、強引な事業実施の結果、泥沼化する公共事業は後を絶たない。現在進行中の成田空港問題はその典型である。

 成田空港の建設予定地は、地元住民に何の説明もないまま閣議決定された。その理由は、

・予定地内に国有地である宮内庁の下総御料牧場があった
・周辺は戦後入植した農民が多く経済力が乏しいため買収が容易に進むと考えられた

からである。しかし、事前協議もないままの決定に、地元住民は大反対した。にもかかわらず、機動隊による反対派排除と土地収用を行い、反対運動を激化させ、反対派と支援者、警察官などに多くの犠牲者が出た。1991(平成3)年には一部の反対派農民が協議に参加し、1995年には当時の村山富市首相がそれまでの強権的な方針を謝罪した。

 しかし、空港の拡張は反対派の意向を無視する形で続けられ、2002年には第2滑走路が供用開始された。しかし、その過程で反対派が所有する未開拓地は高いバリケードで囲まれてしまった。

 2023年2月、成田空港会社は機動隊を導入し、反対派の建物や看板を撤去する事件も起きた。その結果、成田空港は当初の計画とはまったく違う姿になってしまった。何より、空港予定地に残る反対派との和解はもはや考えられない。

 ともすれば、中央リニア新幹線は、静岡県内でルートが途切れたまま、永遠に未完成路線になりかねない。トンネル工事で大井川の水量が減るのは確実だ。もちろん、JR東海は具体的な対策を示している。しかし、実際の環境への影響は工事が始まってみないとわからない。だからこそ、誰もが納得するまで対話と説明を繰り返すことが不可欠なのだ。

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