リニア新幹線工事 川勝知事の発言がどんなに奇異でも、早期着工を目指すべきでない理由

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リニア中央新幹線の開業時期が不透明になってきた。2023年12月、JR東海は開業時期を「2027年」から「2027年以降」に変更することを決定し、国土交通省の認可を得た。公共事業を実施するにあたっては、反対派の声にも耳を傾け、それがどんなに奇矯なものであっても説得する努力が不可欠である。

過去から学ぶ公共事業の鉄則

JR東海の金子慎社長との会談を終え、取材に応じる静岡県の川勝平太知事。2020年6月26日撮影(画像:時事)
JR東海の金子慎社長との会談を終え、取材に応じる静岡県の川勝平太知事。2020年6月26日撮影(画像:時事)

「公共事業は法にかない、理にかない、情にかなうものでなければならない」

この言葉は、公共事業の鉄則を端的に示している。日本のダム建設史上最大の紛争といわれる「蜂の巣城紛争」の中心人物、室原知幸氏残した言葉だ。

 蜂の巣城紛争とは、大分県日田市と熊本県小国町にまたがる一級河川・筑後川水系の津江川に計画されていた下筌(しもうけ)ダムの建設を巡る紛争である。

 1953(昭和28)年に九州地方に甚大な被害をもたらした「昭和28年西日本水害」の後、当時の建設省は筑後川水系のダム建設を計画。当時、建設省の進め方は強引だった。1956年1月、建設省九州地方建設局は、住民に説明のないまま調査を開始した。このとき、立木も所有者の許可なく伐採され、測量された。

 1957年8月、建設省は初めて住民説明会を開いたが、下流域の水害を防ぐためのダムの必要性の説明にとどまり、住民の最大の関心事である補償問題には触れなかった。水没地は古くから日田杉の産地であり、住民の先祖の多くはこの杉林で生計を立ててきた。建設省は、こうした人々に土地を手放すよう説得するのを怠っていたのである。

 こうした初期段階での失敗が住民の不信を招き、ダム反対運動が盛り上がった。その中心にいたのが、地元の名士で山林所有者の室原氏だった。

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