リニア工事見通し立たず 地元民が懸念する「丹那トンネルの二の舞」という現実、水源枯渇の歴史と川勝知事の正当性とは

キーワード :
,
2027年のリニア中央新幹線開業が危ぶまれている。JR東海の丹羽俊介社長は8月3日、大阪市内で開いた定例記者会見で、リニア中央新幹線の品川~名古屋間の建設が「まだ見通しが立っていない」ことを明らかにした。

計画の危うさを感じる地元民

報道陣に公開されたリニア中央新幹線の改良型試験車。2023年3月2日午後撮影。山梨県都留市(画像:時事)
報道陣に公開されたリニア中央新幹線の改良型試験車。2023年3月2日午後撮影。山梨県都留市(画像:時事)

 2027年のリニア中央新幹線開業が危ぶまれている。

 JR東海の丹羽俊介社長は8月3日、大阪市内で開いた定例記者会見で、リニア中央新幹線の品川~名古屋間の建設が

「まだ見通しが立っていない」

ことを明らかにした。静岡県が大井川の流量減少を懸念し、静岡区間の着工を認めていないためだ。なぜ静岡県はそこまでかたくななのか。

 筆者(昼間たかし、ルポライター)は、これまで多くの静岡県民にリニア中央新幹線について話を聞くことがあった。さまざまな報道で、川勝平太知事は着工を拒否していると批判されてきた。しかし、静岡県民は違う。保守もリベラルも関係なく、

「着工を認めるべきではない」

と考える人が多いのだ。静岡市と御殿場市に住む筆者の知人が以前、冗談交じりでこんな話をしてくれたことがある。

「スーパーで丹那牛乳が売られているのを見るたびに、リニア計画の危うさを感じる」

 丹那牛乳とは静岡県東部にある函南町の丹那地区で作られている牛乳だ。同町は

・三島市
・熱海市
・伊豆の国市
・沼津市

などに隣接している。彼らはこの丹那牛乳から、丹那トンネル建設による湧水枯渇を連想するそうだ。少々マニアックな指摘である。

 丹那トンネルは東海道本線の熱海駅と函南駅の間にあるトンネルだ。隣には新幹線の新丹那トンネルも走っている。このトンネルは、現在の御殿場線を経由する東海道本線のルートを一気に短縮し、鉄道の高速化に貢献したトンネルとして知られている。

 しかし同時に、地域の水源を枯渇させ、産業を破壊するという弊害ももたらした。その経緯を説明しよう。

全てのコメントを見る