三菱自動車「中国撤退」という衝撃 モビリティ企業を取り巻く地政学リスクと付きつけられる新市場戦略

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2023年、経済や貿易の世界では不穏な空気が漂い、日本のモビリティ企業の間でも中国ビジネスの見直しが広がった。

三菱自動車の中国撤退

中国国旗を振る少年(画像:写真AC)
中国国旗を振る少年(画像:写真AC)

 こういった形で経済や貿易の世界で不穏な空気が強く漂うようになり、日本のモビリティ企業の間では中国でのビジネスを見直す動きが広がった。

 例えば、大手自動車メーカーの三菱自動車は10月、世界最大の自動車市場である中国から撤退することを決定した。三菱自動車は2012(平成24)年から湖南省で中国メーカーと合弁で車の現地生産を続けてきたが、EVの人気の広がりによって苦戦を強いられ、3月から生産を停止していた。

 地政学的背景がこの決断に直接関係したかは分からないが、マツダが2022年8月、地政学リスクへの懸念から今後新車の製造で使用する部品の対中依存度を下げていく方針を明らかにし、ホンダも国際的な部品のサプライチェーンを再編し、中国とその他地域のデカップリング(切り離し)を進めていく方針を発表。上述の中国側の対日不満の高まりも相まって、今後モビリティ企業の脱中国はいっそう進んでいく可能性があろう。

 また、これに関係するが東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドなどグローバルサウスを重視する動きも2023年広がった。

 ベトナムやタイ、インドネシアなどは以前から日本のモビリティ企業にとって大きな市場だが、中国への地政学的懸念より、ASEANの重要性はさらに高まっているといえる。そして、経済成長を続けるインドを重視する企業の数も飛躍的に増えており、中国からインドへシフトする企業の動きが広がる可能性があろう。

 インドは2023年の人口で中国を追い抜き世界最大の人口を有する国となり、若年層の人口が多く、今後さまざまな課題はあるものの、経済規模は今後拡大の一途をたどり、労働力や消費力が飛躍的に高まっていくだろう。

 経済産業省も6月に2023年度版の通商白書を発表し、グローバルサプライチェーン(供給網)を強靱(きょうじん)化する必要性を示し、中国を巡る地政学リスクや経済的手段で貿易相手国に圧力を掛ける経済的威圧に対処するため、ASEANやインドなどグローバルサウスとの連携強化を図る重要性を示した。

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