三菱自動車「中国撤退」という衝撃 モビリティ企業を取り巻く地政学リスクと付きつけられる新市場戦略

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2023年、経済や貿易の世界では不穏な空気が漂い、日本のモビリティ企業の間でも中国ビジネスの見直しが広がった。

中国の対日制裁強化

三菱自動車のロゴ。2020年1月22日撮影(画像:EPA=時事)
三菱自動車のロゴ。2020年1月22日撮影(画像:EPA=時事)

 2023年が早くも終わろうとしている。今年も世界ではさまざまな変化があったが、日本のモビリティ企業への影響という視点から見た場合、日中の経済や貿易を巡る関係が最大のトピックといえよう。2023年、日中の経済や貿易を巡る関係には大きな摩擦が生じた。

 2022年10月、米国のバイデン政権は先端半導体が中国によって軍事転用されるリスクを回避するため、先端半導体分野で中国への輸出規制を強化した。しかし、中国による先端半導体そのものの獲得、製造に必要な材料や技術、専門家の流出などを完全に防止できないと判断したバイデン政権は2023年1月になり、先端半導体の製造装置で世界シェアを誇る日本とオランダに対して同規制に加わるよう要請し、日本は3月に米国と足並みをそろえることを発表した。

 日本は7月下旬より14nm幅以下の先端半導体に必要な製造装置、繊細な回路パターンを基板に記録する露光装置、洗浄・検査に用いる装備など23品目で対中輸出規制を開始した。しかし、中国の貿易上の対日不満はいっそう膨れ上がり、それは実際行動としてすぐに移された。

 中国は3月に日本が対中輸出規制を発表した時点で、

・電気自動車(EV)
・風力発電用モーター

などに欠かせない高性能レアアース磁石の製造技術の禁輸などをちらつかせていた。そして、7月に半導体など電子部品の材料となる希少金属ガリウムとゲルマニウムの輸出管理を厳格化する方針を示し、その翌月から早速開始された。

 ガリウムやゲルマニウム関連製品を諸外国に輸出する場合、事前に政府に輸出許可を申請する必要があるが、中国は世界の

・ガリウム生産の90%
・ゲルマニウム生産の60%

を占めており、日本は生産の多くを中国に依存してきた。

 そして、中国側の対日不満は、日本産水産物の全面輸入停止という形でも示された。福島第一原発の処理水放出に伴い、中国は日本産水産物の全面輸入停止という措置を講じたが、これによって中国に売り上げの多くを依存してきた水産業者からは大きな悲鳴の声が上がった。

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