機体墜落もくろみ、非番パイロットが「エンジン停止」未遂 アラスカ航空傘下のホライゾン航空、今こそ「航空テロ」の歴史を振り返ろう

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米国ワシントン州エバレット発サンフランシスコ行きの航空機内で、コックピットにいた「非番のパイロット」が飛行中に突然エンジンを止めようとした。航空テロ事件を振り返る。

航空テロの変遷

2018年11月9日、カルガリー国際空港の滑走路15Rで離陸のためタキシングするホライゾンエアのエンブラエル175 N633QX(画像:ジョニーw3)
2018年11月9日、カルガリー国際空港の滑走路15Rで離陸のためタキシングするホライゾンエアのエンブラエル175 N633QX(画像:ジョニーw3)

 10月22日、米国ワシントン州エバレット発サンフランシスコ行きの航空機内で、コックピットにいた「非番のパイロット」が飛行中に突然エンジンを止めようとし、機長らが取り抑えた後、オレゴン州ポートランドに緊急着陸するという事件が発生した。乗員乗客83人にけがはなかったという。

 緊急着陸したのはアラスカ航空傘下のホライゾン航空の旅客機で、エンジンを止めようとした40代のパイロットはその後拘束され、殺人未遂の容疑で起訴された。男は2001年からホライゾン航空に勤務し、事件当時は非番のパイロットらが使うコックピットの補助席に座っていた。これまでのところ動機などはわかっていないが、

「テロ組織との関係を示す情報もない」

という。

 今回は幸いにも未遂となり、被害者ができなかったことが何よりだ。だが、過去を振り返れば、世界各地では航空機を使ったテロが繰り返し発生している。

 旅客機が標的となるテロ事件というと、多くの人が「9.11同時多発テロ」を思い出すだろう。1機目の旅客機がニューヨークの象徴だったワールドトレードセンターに突っ込み、その数分後に2機目が突っ込み、ビルが崩壊した。日本人24人を含む3000人近い犠牲者を出す前代未聞の航空テロ事件となり、その後、米国はアフガニスタンでの対テロ戦争へと入っていった。

 20世紀には、1994年12月のマニラ発成田行きのフィリピン航空機爆破事件(成田へ向かう最中、沖縄県の南大東島付近上空で爆発し、日本人男性ひとりが死亡。那覇空港へ緊急着陸し、犯人はアルカイダメンバーのラムジュ・ユセフ)、1988年12月のロッカービー事件(フランクフルト発デトロイト行きのパンアメリカン航空機がスコットランド上空で爆発し、乗員乗客270人全員が死亡。事件には当時のリビア政府が関与)、1987年11月の大韓航空機爆破事件(アブダビからバンコクへ向かう最中、北朝鮮の工作員ふたりが仕掛けた爆弾が爆発し、乗客乗員105人全員死亡)、など繰り返し旅客機を利用したテロが発生した。

 しかし、20世紀に発生した航空テロ事件は主に国家、政府が関与したものだったが、21世紀に入っては非国家主体が関係する航空テロ事件が目立つようになった。

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