山手線「防犯カメラ」強化 撮影データが悪用されないことを保証する法制度が不可欠だ

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列車内での事件多発を受け、鉄道への防犯カメラ設置が進められている。国土交通省は、三大都市圏と新幹線の全路線を対象に、新造車両への防犯カメラの設置を義務づける方針を立てている。

2021年に批判されたJR東日本

山手線(画像:写真AC)
山手線(画像:写真AC)

 列車内での事件多発を受け、鉄道への防犯カメラ設置が進められている。国土交通省は、三大都市圏と新幹線の全路線を対象に、新造車両への防犯カメラの設置を義務づける方針を立てている。

 また運用面でも強化が進められており、JR東日本はトラブル対応のため、山手線の車両に設置されている防犯カメラについて、指令室など車外からの映像を即座に目視で確認できる機能の追加を決定した。乗客の安全とともに、プライバシーをどのように守っていくのかが課題となっている。

 駅や車内の防犯カメラは鉄道会社ではいまや当たり前だが、過度な使用が批判されることもある。JR東日本が2021年7月に導入した顔認証付き防犯カメラは、批判の一例だ。

 導入にあたり、同社は、新幹線や在来線の主要駅や施設に多数のカメラを設置し、セキュリティーセンターで集中的に監視していた。しかし、このシステムによって得られた顔情報が、服役経験者などの特定のリストと照合されることによるプライバシーの問題が指摘され、多くの批判を浴びた。その結果、同社は同システムの導入を見送った。

 高性能な防犯カメラの普及と、それによって個人のプライバシーが侵されることへの懸念は世界各国で問題となっている。

 世界でも有数の“防犯カメラ大国”となっているのは英国と中国である。英国は世界でも初めて防犯カメラの普及に努めた国だ。1990年代に政府が防犯目的で推進した防犯カメラは、2005年のロンドン同時多発テロで容疑者発見に効果を発揮し、市民の理解を得た。

 中国では2005年から防犯カメラの設置が進んだ。中国では防犯目的だけでなく、公共の場での個人の行動をモニターし、信号無視などの違反を検知し「社会信用システム」にも利用している。公共の場でのマナー違反を点数で管理し減点が続くと社会活動が制限されるというものだ。これによって、中国ではマナーが向上したと歓迎されている。

 しかし、こうした利点の一方で負の側面があることは否めない。個人の行動がどこまで監視され、利用されているかが明確になっていないからだ。JR東日本の顔認証付きカメラの導入も、この文脈で批判を浴びたものである。

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