飛行機の着陸後、機体が「完全に停止するまで」席を立ってはならないワケ

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離陸後、航空機が高度約3000mまで上昇すると、シートベルト着用サインは消灯することが多い。楽をするためにブランケットの下でこっそりシートベルトを外す……という人もいるかもしれない。しかし危険である。

乱気流の予測不可能性

シートベルトのイメージ(画像:写真AC)
シートベルトのイメージ(画像:写真AC)

 離陸後、航空機が高度約3000mまで上昇すると、シートベルト着用サインは消灯することが多い。その後、当日の予想乱気流などに応じて機長の判断で点灯・消灯する。確率的に乱気流にぶつかることはまれなので、まだ人生で一度も激しい揺れを経験したことがない人も多いだろう。そして、楽をするためにブランケットの下でこっそりシートベルトを外す……という人もいるかもしれない。

 筆者(加藤舞、航空経済ライター)がエミレーツ航空のCAとして勤めていたときの実体験を紹介しよう。

 それは、食事サービスが終わった後、エコノミークラスのゴミを回収していたときのことだった。何の前触れもなく、機体が突然大きく降下し、筆者の体は座席にたたきつけられた。

 機内の通路を後方のギャレーに向かって歩いていたところだったが、急降下によって体が持ち上げられ、上昇とともに座席の肘掛けにたたきつけられた。その感覚を今でも覚えている。予測不可能な乱気流のため、もちろんシートベルト着用サインは点灯していなかった。

 程なくしてシートベルト着用サインが点灯し、機長から乗員乗客全員に直ちに座席に着くよう緊急アナウンスが流れたが、機体はエアポケットに入ったように上下に激しく揺れ続け、ジャンプシートや近くの空席にたどり着くのは難しく、膝をついてなんとか前の座席の肘掛けに腕を回すだけで精いっぱいだった。

 幸い、食事サービスが終わったばかりだったので、乗客はまだ着席しており、けが人もいなかったが、小さな子どもや高齢の乗客が通路を歩いていたらどうなっていたかと思うとぞっとした。

 このような突然の揺れなど不測の事態に備え、シートベルト着用サインが点灯しているときはもちろん、点灯していないとき、特に就寝中も必ずシートベルトを着用することを強くお勧めする。揺れてからではなく、揺れる前にシートベルトを締めることが大切なのだ。

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