北陸新幹線延伸で「飛び地路線」誕生も、富山・福井・石川の対応が全然異なるワケ
北陸3県で際立つ富山の主体的な対応

福井、石川の両県で積極的な動きがない背景には、金沢以西の北陸本線が経営分離前であるうえ、城端線と氷見線がそれぞれの路線内だけで運行しているのに対し、越美北線が福井駅、七尾線が金沢駅に乗り入れ、運行面で孤立していないことがあるとみられる。ただ、その点を割り引いても、富山県の動きは際立っている。
富山県では、廃止の危機に直面した加越能鉄道(現加越能バス)の高岡軌道線、新湊港線を、富山県や高岡市などが出資する三セクの万葉線が引き継いだのをはじめ、JR西日本の富山港線を富山市などが出資した三セクの富山ライトレール(現富山地方鉄道)がLRT化で再生させた実績を持つ。この経験が公共交通維持に積極的な姿勢を生んだのだろう。
福井県も鉄道支援で評価が高い地域だ。廃止届が出た京福電鉄の越前本線、三国芦原線を坂井市などが三セクのえちぜん鉄道を設立して継承したほか、経営危機の福井鉄道に対して土地などを福井市など沿線自治体が取得して支援してきた。だが、越美北線は国の
「再構築協議会が設置されてもおかしくない輸送密度」
だけに、先行きを読みにくい。
石川県はこれまで、鉄道ファンらから「鉄道に冷たい」と批判されたこともあるが、金沢市などが経営悪化に苦しむ民間の北陸鉄道を支援する方針を8月、打ち出している。知事も2022年、7期務めた谷本正憲氏から元文部科学相の馳浩氏に交代し、今後の動きが注目される。
北陸3県は急激な人口減少で鉄道を取り巻く環境が厳しさを増している。手遅れになる前に沿線自治体が覚悟を持って路線維持に乗り出さなければ、住民の足が消えかねない。その一方で、自治体の予算は先細りが見込まれる。過度の負担は自治体財政を立ち行かなくする可能性を秘める。飛び地路線を抱える自治体は難しい選択を迫られている。