高齢化社会の新ヒーロー? 「移動スーパー」という、限りなき可能性

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山間部で「買い物弱者」「買い物難民」「買い物困難者」と呼ばれる人たちが年々増加しているなか、移動スーパーが現在注目を集めている。その利便性とは。

増加する「買い物弱者」

移動スーパー「とくし丸」(画像:とくし丸)
移動スーパー「とくし丸」(画像:とくし丸)

 高齢化と過疎化が進む日本では、特に山間部で「買い物弱者」「買い物難民」「買い物困難者」と呼ばれる人たちが年々増加している。

 農林水産省のウェブサイトでは、その状況について「高齢化や単身世帯の増加、地元小売業の廃業、既存商店街の衰退により、過疎地域のみならず都市部においても、高齢者等を中心に食料品の購入や飲食に不便や苦痛を感じるいわゆる“買い物弱者”が増えてきており、“食品アクセス問題”として社会的課題になっている」と説明している。

 経済産業省のウェブサイトには、買い物弱者向けの「取組みの概要」として、

・家まで商品を届ける:宅配、買物代行、配食
・近くにお店を作る:移動販売、買物場の開設
・家から出掛けやすくする:移動手段の提供
・コミュニティを形成する:会食
・物流を改善・効率化する:物流効率化

の五つを提示している。

 このうち、移動販売に相当する移動スーパーが現在注目を集めている。特に、2012(平成24)年1月にスタートした「移動スーパーとくし丸」(徳島県徳島市)は、全国的に利用者が増え、2022年5月には稼働台数が1000台を超えた。その背景には一体何があるのだろうか。

アンケート調査の結果

買い物弱者問題への取り組みの概要。「買物弱者応援マニュアル」より(画像:経済産業省)
買い物弱者問題への取り組みの概要。「買物弱者応援マニュアル」より(画像:経済産業省)

 経済産業省の「買物弱者応援マニュアル」によると、買い物弱者は700万人と推計されている。そんななか、農林水産省は2022年4月、全国の市町村を対象とした「食料品アクセス問題」に関するアンケート調査の結果を公表した。

 食料品の買い物が不便・困難な住民に対する対策を調査した結果、2022年度に「対策を必要としている」と回答した市町村は87.2%で、2015年度の81.0%から増加傾向にある。

 また、対策が必要な市町村のうち、「行政による対策が実施されている」と回答した市町村は73.5%で、2015年度の63.7%と比べると増加しているが、実際には十分ではない。

 そのため、アンケートに回答した全自治体のうち、

「64.6%」

に民間事業者が参入していた。このことからも、行政だけでは買い物弱者への対応が難しいことがわかる。

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