「送料無料表示は変えない」 新経済連盟の意見表明を物流ジャーナリストの私が一笑に付すワケ

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「送料無料表示の撤廃を求める物流業界からの要請を、EC/通販業界が拒否したらしい」──実はこれ、一部誤解があるのだが、それにしてもばかげた話だ。下手をすればEC/通販ビジネスは自爆しかねない。

送料無料表示の撤廃を拒否した、三木谷浩史氏率いる新経済連盟

宅配トラックのイメージ(画像:写真AC)
宅配トラックのイメージ(画像:写真AC)

 送料無料表示の撤廃を真っ向から否定したのは、新経済連盟である。消費者庁が主催する、「第3回 『送料無料』表示の見直しに関する意見交換会」(2023年8月10日)においてのことだった。

 新経済連盟は、このように主張している。

「送料無料表示(「〇〇円以上送料無料」を含む)の別の表現への置き換えはさまざまな理由から困難」
「物流の担い手がいろいろとご苦労されていることは理解するが、送料無料表示が原因だとする主張には合理的根拠がないと言わざるを得ず、表示を変えても問題解決につながるイメージがない」

 送料無料表示の撤廃ができない理由としては、送料を明示してしまうことによる顧客離れや、顧客による商品購入時に正確な送料を確定することができないなどを挙げている。この新経済連盟による主張だけが独り歩きし、SNSでは

・物流業界(特にEC/通販の配達を担う宅配事業者)に対する擁護
・EC/通販業界に対する批判

が見受けられる。だがこれは、EC/通販業界の総意ではない。

「第6回『送料無料』表示の見直しに関する意見交換会」(8月23日) にて意見を発表した日本通信販売協会は、送料無料表示の見直しに協力する基本姿勢を明らかにした上で、

「協会としては、物流の下請け配送事業者の地位向上に向け、小売業一体となって取り組みたい。その際には、大手プラットフォーマーも含め、市場に影響のある事業者・関係者の協力が不可欠と考える」

としている。

 これは、新経済連盟の代表理事が、楽天の創業者で、現在も代表取締役会長兼社長を務める三木谷浩史氏であることを意識して、

「大手プラットフォーマーも含め」

とくぎを刺しているのだろう。

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