街で見かける「軽自動車」がどれも似たデザインなワケ 違いはエンブレムだけ? いったいなぜなのか

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街なかでよく見かける、同じ形をしているのにメーカーのエンブレムが違うクルマ。一見、オーナーの好みでカスタマイズされていると思うかもしれないが、そうではない。

OEM車が軽自動車に多い理由

ズラリと並ぶ軽自動車(画像:写真AC)
ズラリと並ぶ軽自動車(画像:写真AC)

 OEM車が軽自動車に多い背景には、日本に特化した軽自動車の特性がある。軽自動車は日本の道路事情やもろもろの事情にマッチするよう開発されている。ゆえに、軽自動車独特の技術やノウハウが詰め込まれているのだ。

 加えて、軽自動車は利益率が低く薄利多売が大前提の商品。多額の開発費用をかけて自社開発し販売するのはリスクが大きいのだ。しかも自社の小型車ユーザーが、自社の軽自動車に乗り換えてしまうという危険もはらんでいる。自社開発の軽自動車をラインアップに加えれば、自社内で市場を食い合ってしまい、軽自動車が売れれば利益が減っていくというジレンマを抱えることになるのだ。

 軽自動車は人気があるのもメーカーにとって悩ましい点だ。すでに自社の小型車を利用しているユーザーや企業が軽自動車の導入を検討したとき、自社で提供できる商品がなければ顧客は他メーカーで購入することになる。ここで他メーカーとのつながりができてしまうと、自社の車両を利用している小型車まで、次からは軽自動車を購入するときにお世話になった他メーカーで……ということになりかねないのだ。

 これらの問題を解決するのにうってつけなのがOEM車ということになる。OEMなら、開発費用はゼロ、もちろんOEM契約の費用が発生するが、自社開発よりもお得ということだろう。

 自社の小型車の販売数を下げる可能性のある軽自動車を多額の費用をかけることなく用意できる。同時に現在の顧客のニーズにも応えて、他社に顧客を奪われるリスクを避ける最適解というわけだ。

広がる軽自動車のOEM

軽ハイトワゴンの初代「スペーシア」(画像:スズキ)
軽ハイトワゴンの初代「スペーシア」(画像:スズキ)

 このようにOEM車が多く存在する軽自動車。1台で複数社に供給される車種も存在する。例えば、2013年まで販売されていたスズキ「パレット」がそうだ。パレットは、日産では「ルークス」として販売され、マツダでは「フレアワゴン」として販売されていた。そして2014年より、日産は三菱と共同設立したNMKVからOEM供給を受けた車両を「デイズルークス」(現ルークス)として販売している。

 また商用車になると、この傾向はさらに強まる。

 スズキの「エブリィ」はマツダ・三菱・日産にOEM供給されている。ダイハツ「ハイゼットトラック」はトヨタとスバルにOEM供給されており、軽トラックはスズキとダイハツの2社のみが製造している状況だ。

 顧客のニーズに応えつつ、各社の負担を軽減して、販売することのできるOEM車。軽自動車の世界ではいいことずくめのようだが、実はデメリットも存在する。

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