中国依存から脱却? パナソニックのEV電池材料「カナダ調達」は吉と出るのか、それとも凶か

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パナソニックエナジーとカナダのヌーボーモンドグラファイトとの業務提携。その背景には何があるのか。

10月に覚書締結に踏み切った理由

ヌーボーモンドグラファイトのウェブサイト(画像:ヌーボーモンドグラファイト)
ヌーボーモンドグラファイトのウェブサイト(画像:ヌーボーモンドグラファイト)

 IRAは、米国でユーザーが購入時に補助金が受けられるEVについて次のように規定した。

・車両の最終組み立てが米国、カナダ、メキシコで行われること
・使用する電池材料の調達額の40%は、米国と自由貿易協定 (FTA) を締結している国で採掘/精製されたもの、または米国、カナダ、メキシコでリサイクルされたものであること
・電池関連部品の50%は、米国、カナダ、メキシコで製造されていること

 このうち、電池に関する規定は、米国をEVの主要マーケットとしている自動車メーカーに決定的な影響を与える。パナソニックエナジーは、IRA法案成立直後の2022年9月にカナダのメーカーと黒鉛調達に関する緊急交渉を開始した。

 1か月後の10月に覚書締結に踏み切ったのはなぜか。その背景には、IRA法案対策と同時に、黒鉛調達リスク分散を兼ねた中国支配からの脱却があった。つまり、絶好の機会としてサプライチェーンの再構築を決断したのである。

 今後、パナソニックエナジーがNMGと連携してカナダでの黒鉛採掘・精製を軌道に乗せることができれば、これまでの中国依存から脱却できる。その上でIRA法案対策も両立できれば、北米EV市場でのシェア拡大を目指す自動車メーカーに、同社のリチウムイオン電池を売り込む機会にもなる。

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