「踏切の遮断機が下りない」 ことでん7月トラブルに見る、地方鉄道の深刻な設備老朽化 耐用年数はもはや理想と化したのか

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地方鉄道で設備老朽化が原因のトラブルや事故が目につくようになってきた。資金不足で安全運行に注意信号がともる厳しい実態が浮かび上がる。

地方鉄道の費用確保は自治体頼み

8月に開業した宇都宮ライトレール(画像:写真AC)
8月に開業した宇都宮ライトレール(画像:写真AC)

 全国に中小私鉄と三セク鉄道は計95社あるが、コロナ禍前の2019年度は鉄軌道事業の経常収支で

「約8割」

に当たる74社が赤字を計上した。コロナ禍の2021年度は赤字が91社まで増えている。

 設備の更新資金は国の補助金や自治体の支援に頼らざるを得ない。その結果、補助金などの枠内でしか設備更新に資金を回せず、維持費を圧縮してきたつけがトラブルなどとなって噴出し始めた。全国の三セク鉄道で組織する第三セクター鉄道等協議会は

「国に支援拡大を訴えているが、三セク鉄道を取り巻く環境は厳しさを増すばかり」

と頭を痛めている。

 自治体が鉄道維持の覚悟を決め、施設を自治体で保有して鉄道会社が運行に専念する上下分離方式を導入した例もある。この方式だと設備更新費を負担するのは自治体。青森県が青い森鉄道(青森市)、富山県富山市が富山地方鉄道(富山市)に導入するなど、その数が少しずつ増えてきた。8月に開業した宇都宮ライトレールも栃木県宇都宮市と芳賀(はが)町が施設を保有している。

 だが、自治体の負担は大きい。滋賀県甲賀市は2013(平成25)年度、市内を走る信楽高原鉄道設楽線に上下分離方式を導入したが、10年間の設備投資や修繕にかかった費用は約25億円に上った。年間負担額は導入前の2倍以上。財政規模の小さい自治体では手を出せそうもない。

 国は10月施行の改正地域公共交通法で上下分離方式を導入する自治体を支援する方針だが、国の財政危機も深刻さを増しているだけに、どこまで支援できるのかは見通しにくい。地方鉄道の老朽化克服は袋小路に迷い込んでいる。

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