「踏切の遮断機が下りない」 ことでん7月トラブルに見る、地方鉄道の深刻な設備老朽化 耐用年数はもはや理想と化したのか

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地方鉄道で設備老朽化が原因のトラブルや事故が目につくようになってきた。資金不足で安全運行に注意信号がともる厳しい実態が浮かび上がる。

脱線事故や路線見直しも

設備の老朽化で路線見直しの検討が進むとさでん交通の路面電車(画像:高田泰)
設備の老朽化で路線見直しの検討が進むとさでん交通の路面電車(画像:高田泰)

 設備の老朽化が事故を招いた例がある。6月に長野県上田市の上田駅構内の側線で回送列車が脱線した長野県の第三セクター・しなの鉄道(長野県上田市)だ。原因はレールの下に敷く枕木が老朽化したためで、列車がカーブしたときに生じた力に耐えられなかった。

 ブナやクリ、ヒノキなどを原料とする木製の枕木は、腐食するために寿命が10~20年とされるが、事故を起こした枕木は約30年間、使用されてきた。しなの鉄道は

「より頑丈なコンクリート製に切り替えたい」

としている。長野県は枕木の更新費約800万円を補助する方針で、21日開会の9月定例県議会に補正予算案を提出する。

 高知県高知市と南国市、いの町で路面電車を運行するとさでん交通(高知県高知市)は、設備の老朽化から路線見直しの検討に追い込まれた。高知県と高知市など12市町村が出資する事実上の公営企業だが、車齢60年を超す車両が

「7割以上」

を占め、年間の設備更新費が8億円と見積もられるのに対し、2億3000万円しか支出できていない。

 有識者による高知市地域公共交通あり方検討会は7月末、岡崎誠也高知市長に安全対策に課題があるとして路線再編に言及する報告書を提出した。高知市交通戦略課は

「関係する地方自治体と持続可能な将来像を検討したい」

としているが、取り得る選択肢が限られ、対応に苦慮している。

地方鉄道車両の車齢51年以上「約4分の1」

メンテナンスを繰り返して維持している徳島市のJR四国富田川橋梁(画像:高田泰)
メンテナンスを繰り返して維持している徳島市のJR四国富田川橋梁(画像:高田泰)

 国交省によると、地方鉄道が保有する車両は2021年3月末で約2800両。鉄道車両の寿命は一般に30~40年とされるが、車齢51年以上が

「約4分の1」

を占める。新品の鉄道車両購入費は1両億単位。地方鉄道では手を出せず、大手私鉄から中古車両を購入していることも車齢を上げる一因になっている。

 鉄道橋の平均経過年数は56年、トンネルは62年。中には完成後100年を超す鉄道橋もある。徳島県徳島市の新町川に架かるJR牟岐線の富田川橋梁は1913(大正2)年開通の「110歳」。

 鉄道橋は排水を必要とする路面がないため、道路橋より長持ちするが、メンテナンスを繰り返して維持している状態だ。

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