東海道貨物線「旅客化」に現実味? “扇島ニュータウン”建設プラン浮上で「都市伝説」そろそろ脱却か
旅客併用化構想のルート詳細
ただし扇島は京浜工業地帯の京浜運河の先にある文字どおりの「島」で、鉄道はなく東西を貫く首都高速湾岸線と京浜運河を海底トンネルでくぐる首都高速神奈川6号川崎線、そして同様にJFE専用の海底トンネルで外界と接続しているだけである。
同運河を渡って約2km先の“本土”を走る鶴見線を幹線鉄道に格上げし、“扇島ニュータウン”を起爆剤として軌道に乗り始めた京浜工業地帯の再開発をけん引しようという動きのようだ。
JR東海道貨物支線旅客併用化構想のルートは、まずは都内2か所、JR品川駅と東京臨海高速鉄道東京テレポート駅(すでに完成済みの東京港海底トンネルを流用)の両駅を起点とする。「双頭の竜」をほうふつさせる姿だ。
東京テレポート側は、東京臨海線を流用し東京港を海底トンネルでくぐり、対岸の品川ふ頭付近で現在廃線の貨物線「大汐線」(旧汐留駅~東京貨物ターミナル駅)に接続。もう片方は品川駅から臨海部方面へと線路を新設し、同じく大汐線に接続する。
1本になった同線はターミナルで東海道貨物支線に乗り入れ、トンネルで多摩川をくぐってJR浜川崎駅へ。さらに鶴見線と連絡しJR弁天橋駅まで進んだら、ここからは新線を引き鶴見線を越え生麦地区に進み、首都高速道路横羽線と並走しつつ既存の高島線(貨物線)に達しそのままJR桜木町駅へ、というルートを想定する。
総延長は約33.3kmで、うち約15km、つまり半分弱が流用でなく、新規と目される。また、構想では浜川崎駅で分岐し既存のJR南武線に乗り入れてJR川崎線に向かう「川崎アプローチ線」も含まれるが、ここでは割愛する。
構想は2000(平成12)年に旧運輸大臣の諮問機関、運輸政策審議会の第18答申「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画」で“有望株”として名が上がり、2015年度の開業が望ましいと、いわば国から叱咤(しった)激励を受けている。
当時は東京~横浜を結ぶJR東海道線など鉄道各線のラッシュ時における混雑率が軒並み200%近い異常事態で、新線開設による混雑緩和が喫緊の課題と政府も憂慮していた。