東海道貨物線「旅客化」に現実味? “扇島ニュータウン”建設プラン浮上で「都市伝説」そろそろ脱却か
これまでの経緯

ところがその後、日本経済の長期低迷や少子高齢化の加速など社会環境が、想定と比べ大きく乖離(かいり)し、さら鉄道会社の努力なども功を奏した結果、前述した混雑率もかなり緩和。同構想に期待された東京~横浜間の混雑緩和という役目は、あまり重要ではなくなっていく。
それでも次の国交大臣の審問機関、交通政策審議会による「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」の答申(198号答申)が2016年にまとまると、同路線は引き続き“有力路線”として残るが、今度は
「国際競争力の強化に資する」
という新たな任務が編み出される。
沿線の神奈川県(事務局)を筆頭に、
・東京都
・横浜市
・川崎市
・品川区
・大田区
の6自治体も早期実現のため整備検討協議会を結成し、国などに粘り強く働きかけているが、同答申では
「沿線開発で需要を創出すべき」
とのただし書きが添えられた。要するに
「利益が出るように沿線再開発を進めて利用客を増やしなさい」
と、忠告されたのも同然で、そのためだろうか、答申にノミネートされながらも、現実味のある話がほとんど出ずに今に至るというのが実態だった。
現に198号答申は「鉄道ネットワークのプロジェクトの検討結果」を表し、同構想の総事業費は5500億円とする一方、投資効率、つまり費用対効果を数値化した費用便益費(「1.0」以上が黒字)は「0.3」とほぼ「論外」に等しいありさまだった。
だが今回の扇島ニュータウン計画で、
「同構想は息を吹き返したと言っても同然では」
との声も少なくない。加えて同構想の沿線は2011(平成23)年に「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略装具特区」に指定され、各種税制面で相当なアドバンテージが与えられるなど、他の新線開発と比べても、実は圧倒的に有利な立ち位置にある。