東海道貨物線「旅客化」に現実味? “扇島ニュータウン”建設プラン浮上で「都市伝説」そろそろ脱却か

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神奈川県、川崎・横浜両市に広がる臨海工業地域・京浜工業地帯を横切る貨物線「JR東海道貨物支線」に旅客電車を通すという一大プラン「貨客併用化」の構想が、にわかに現実身を帯びている。

「都市伝説」と嘲笑された過去

JR鶴見線(画像:写真AC)
JR鶴見線(画像:写真AC)

 神奈川県、川崎・横浜両市に広がる臨海工業地域・京浜工業地帯を横切る貨物線「JR東海道貨物支線」(旅客用のJR鶴見線と一部重複)に旅客電車を通すという一大プラン「貨客併用化」の構想が、にわかに現実身を帯びている。

 数十年前から話題になっていたが、「採算性に難あり」として

「夢物語」
「都市伝説」

と嘲笑されて来た。ところが“製鉄所城下町”川崎から“城”がなくなり、広大な跡地にニュータウンを建設するという一大プランが浮上する。すると東京都心や隣接の東京国際(羽田)空港、横浜中心部とのアクセス鉄道として、この構想に一躍スポットライトを浴び始めている。

契機はJFE巨大製鉄所の撤退

東日本製鉄所京浜地区(画像:JFEホールディングス)
東日本製鉄所京浜地区(画像:JFEホールディングス)

 日本の大手製鉄会社・JFEスチール(東京都千代田区)は、鉄鋼市場の変化に合わせ工場のリストラを推進中で、川崎・横浜両市にまたがる人工島・扇島にある、世界有数の巨大製鉄所「東日本製鉄所京浜地区」を2023年9月に全面閉鎖すると決めた。

 跡地利用で同社と協定を結ぶ川崎は、同年6月に周辺の同社関連施設なども含めた350ha超を対象とする再開発のグランド・デザインを公表する。

 詳細は省くが、要するに東京~横浜間に位置し、「羽田」に肉薄という地の利を生かして、物流や水素エネルギー、各種R&D(研究開発)、イベント・エンターテインメント施設、住宅施設などを整備するもの。完成予定は30年以上先の2050年度で、インフラ整備に市は2050億円を投じると断言した。

 同市にとっては「清水の舞台から飛び降りる」決断だが、製鉄所がこのまま操業するよりも、再開発した方が人口増につながる。高付加価値の企業・研究施設の進出も期待でき、税収も増え、投資額もすぐに回収可能、とのそろばん勘定が働いたようだ。

 さらに国や県、企業などを合わせた総投資額は2兆6000億円に達する模様で、間違いなく関東最大級の巨大プロジェクトになると見られている。

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