「時給2万2000円」を要求! 強気すぎる米国自動車労組、過大な賃金交渉が日本の自動車産業に与える影響とは
日本の自動車産業への影響

時給150ドルの年収をざっと計算すると、なんと2000万円程度となる。日本の自動車産業への影響について考察してみよう。
●日系サプライヤー
最も影響を受けるのは日系サプライヤーで、自社でも交渉が難しい原材料などの価格転嫁交渉を棚上げせざるを得ないだけでなく、年間値引き額のさらなる引き上げリスクにも直面する可能性があり、対岸の火事として事態を静観するわけにはいかない。
●米国に進出している日系自動車企業
UAWの賃金が大幅に上昇すれば、米国自動車産業全体の賃金水準に影響を及ぼし、賃金上昇による固定費増加の連鎖反応が起こる可能性がある。
また、デトロイト3の工場が近隣にある地域では、賃金の高い企業に労働者が集まるため、デトロイト3並みの待遇を提供できない日系自動車関連企業は、労働者の確保が困難になり、最悪の場合、操業停止に追い込まれる可能性もある。
これは既存工場だけでなく、今後新設されるEV工場にも影響を及ぼす可能性がある。前述のIRAが米国でのEV工場建設を後押しし続けるなか、EV工場新設地域の日系自動車企業にとっては、雇用環境が悪化するリスクとなりかねない。
日本の自動車産業の平均時給は約2000円と推定され、ドル換算で14ドルに相当する。米国ではインフレ傾向や金利上昇によって賃金が上昇する傾向にあるが、現状でもUAWの平均賃金の4分の1程度であり、仮に賃上げがフルに実施された場合、その差は10分の1にまで広がるだろう。
改めて日本の労働賃金水準の低さを思い知らされるが、これを機に官民一体となってさらなる賃上げの機運が高まることを期待したい。
今後の交渉の行方

今回のデトロイト3との交渉に先立ち、UAWは2021年後半からディア・アンド・カンパニー、キャタピラー、CNHグローバルなどの農業・建設機械メーカーと相次いで賃上げ交渉を行い、20%以上の賃上げを獲得している。
UAWの主な要求は、主に次のとおりだ。
1.賃金格差の段階的是正
2.派臨時雇用者の待遇改善
3.生活費調整(COLA)の再適用
4.年金給付額の是正
UAWがゼネラルモーターズ、フォード、ステランティスと結んでいる労働契約は、2019年に始まり9月14日に満期を迎える4年契約である。契約期限を前に交渉は重要な局面を迎えているが、すでに難航が予想されている。
米国のアンダーソン・エコノミック・グループは、10日間のストライキが実施された場合、デトロイト3が被る損失は最大50億ドルにのぼると試算しているが、これはGMの従業員4万8000人が参加した2019年の6週間のストライキを想定しているようだ。
日本の自動車業界は、UAWの交渉の行方を注視しなければならない。