主従関係の逆転? VWが「中国現地メーカー」との提携を進めた深刻理由

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7月下旬、VWグループは中国現地メーカーとの提携を相次いで発表した。今後の展開やいかに。

提携を予感させる三つの出来事

オリバー・ブルーメCEO(画像:フォルクスワーゲン)
オリバー・ブルーメCEO(画像:フォルクスワーゲン)

 提携を予感させるVW経営陣らの発言は次のとおりだ。

●オリバー・ブルーメ氏(最高経営責任者(CEO))の発言
 5月10日の株主総会では、投資家から中国EV市場のシェア低下に対する懸念と、BYDが欧州市場にとっても脅威であるとの指摘があった。

 これに対してブルーメ氏は、中国市場におけるEVへの急速なシフトを認めつつも、「(VWグループは)マーケットリーダーとしての地位を維持し、中国市場のニーズに合ったモデルを投入していく」と述べた。この発言は、中国市場向けのEV開発の必要性を認識し、以前から水面下で提携交渉が行われていたことを裏付けている。

●トーマス・シェーファー氏(ブランドCEO)の社内会議での発言
 7月には、EVの販売が低迷し、ID.4を生産するドイツのエムデン工場が約6週間の生産停止を余儀なくされたため、約2000人の管理職に対して「緊急事態」が出された。

 シェーファー氏は今後数か月は厳しい状況が続くとの見通しを示し、今後3年間で112億ドルという巨額のコスト削減目標を提示して理解を求めたとされる。EV投資を加速させるために必要な開発費を捻出するためのコスト削減だが、中国市場での価格競争が激化し、利幅が薄くなる懸念もある。今回の提携は、社内コストを抑えつつ効率的な開発を可能にする画期的な施策であったと考えられる。

●ラルフ・ブランドシュテッター氏(VWブランド中国トップ)の発言
 中国市場で起きている価格競争には深く関与せず、市場シェアや販売台数を拡大せず、利益を重視すると述べた。

 2030年には中国市場が3000万台規模に成長するとの見通しを示しながら、販売台数は400万台程度で満足すると述べ、規模を追求せず堅実な経営路線を貫く姿勢を示した。今後のEVポートフォリオを考えた場合、開発工数を最小限に抑えつつラインアップを拡充するため、小鵬汽車との共同開発に踏み切ったとみられる。

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