ビッグモーターの記者会見はなぜ視聴者をイラつかせたのか? 買い取りナンバーワンでも、謝罪は“ワーストワン”という笑えない皮肉

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7月25日、中古車販売大手のビッグモーターの兼重宏行社長が記者会見で辞任を表明した。しかし、その際の失言で同社への批判はさらに高まることとなった。

「取りあえず謝る」という時代錯誤

事業活動総合保険「ビジネスマスター・プラス」(画像:損保ジャパン)
事業活動総合保険「ビジネスマスター・プラス」(画像:損保ジャパン)

 今回のビッグモーターの記者会見は、どうしてお粗末なものになったのか。

 社員が6000人(2021年2月時点)もいる大企業なら、不祥事対応として他社の謝罪会見の成功・失敗例は社内で共有・蓄積されているだろうし、たとえされていなくともインターネットを使えば、今や過去の成功・失敗例は動画で容易に見られる。それにもかかわらず、自己弁護に終始していたのだ。

 ちなみに、今回の騒動で浮上した損保ジャパンは、2014年から不祥事発生時の企業賠償責任保険のサポートサービスを提供している。同社の事業活動総合保険「ビジネスマスター・プラス」の商品案内には、専門のコンサルティング会社が

・記者会見
・SNSの炎上

までサポートすると記載されている。

 ビッグモーターがこの保険に加入しているかどうかは不明だが、記者会見で経営陣のネクタイの色が統一されていたことからも、専門のPR会社かコンサル会社が関与しているだろう。

 近年の企業の謝罪会見は洗練されている。2021年に大規模通信障害を起こしたKDDIや、顧客情報を流出させたニトリは、真摯(しんし)に謝罪するとともに原因を示し、対応しことで大きく批判されることはなかった。これらの事例は、場当たり的に

「取りあえず謝る」

という記者会見ならやらないほうがいい、ということを示している。

 それにしても、ビッグモーターの記者会見は大失敗だった。兼重社長の個性的なキャラクターから発言が予測できないのに、事前のレクチャーが不十分だった。しかも、その場にいた重役のなかには、彼の発言を止められる者は誰もいなかった。

 買い取り台数は6年連続ナンバーワンらしいが、あの謝罪会見は間違いなく2023年の“ワーストワン”である。

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