東急創業者はなぜ“強盗”と呼ばれたのか? 鉄道会社と敵対的買収、不採算路線切り捨てに巣食う現代の“物言う株主”たち

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鉄道業界は、かつて激しい買収劇が繰り返されていた。東急グループの創始者・五島慶太のエピソードと、今後の鉄道会社が直面するリスクについて考える。

アクティビストが首狙う不採算路線

太田洋『敵対的買収とアクティビスト』(画像:岩波書店)
太田洋『敵対的買収とアクティビスト』(画像:岩波書店)

 次に、コングロマリット・ディスカウントと呼ばれるアクティビストに狙われやすい会社として、鉄道会社があてはまりそうなことがあげられる。

 コングロマリット・ディスカウントとは、多くの事業を抱えていることでかえって株価が低くなっていると考えられるケースだ。成長力があまり高くないと考えられる会社が傘下に成長力の高い会社を抱えている場合や、あるいは低収益の事業を抱えている会社がこうした形になりやすい。

 特にリーマン・ショック後のアクティビストは、複数の事業を営む会社に対して、理論的に計算した企業価値に対して実際の時価総額が下回っていることを指摘し、株価の足を引っ張っていると見られる事業のスピンオフを迫ることが多い。

 ここで思い出されるのが2013(平成25)年に米国のファンドのサーベラス・グループが、西武鉄道に対してTOBを仕掛けた事件だ。このとき、サーベラスは西武ライオンズの売却のほか、

・多摩川線
・山口線
・国分寺線
・多摩湖線
・西武秩父線

の廃線を迫っていたといわれている。

 この敵対的TOBは失敗に終わったが、アクティビストから見て、日本の鉄道会社が低収益な事業や路線を抱えていると思われている可能性は十分にある。

 五島は敵対的買収を駆使して一大路線を築き上げたが、現代の日本においては、敵対的買収やアクティビストの活動によって、不採算路線が切り捨てられていくおそれもあるといえるだろう。

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