東急創業者はなぜ“強盗”と呼ばれたのか? 鉄道会社と敵対的買収、不採算路線切り捨てに巣食う現代の“物言う株主”たち

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鉄道業界は、かつて激しい買収劇が繰り返されていた。東急グループの創始者・五島慶太のエピソードと、今後の鉄道会社が直面するリスクについて考える。

アクティビストが動きやすい日本

小田急電鉄(画像:写真AC)
小田急電鉄(画像:写真AC)

 戦前期、五島は

・京浜電気鉄道
・小田急電鉄
・京王電気軌道
・相模鉄道

などの鉄道会社を傘下に収め、いわゆる「大東急」と呼ばれるグループを作り上げた。

 この大東急は、戦争による被害や戦後の五島の公職追放などによって分割されるが、戦後の五島と株のエピソードについては白木屋の買収がある。

 1953(昭和28)年に横井英樹(1982年のホテルニュージャパンの火災で逮捕され、実刑判決を受けたことでも知られる)が日本橋の老舗百貨店・白木屋の株式を買い集めて乗っ取りを画策し白木屋経営陣と対立すると、最終的に五島が横井の持っていた株を引き取って白木屋を買収した。白木屋は東急百貨店日本橋店となり、現在はコレド日本橋となっている。

 このように五島は戦前・戦後に株を使って一大グループを作り上げた。今後、五島のような人物が現れるとは思えないが、鉄道会社がアクティビスト(物言う株主)に狙われる可能性は十分にある。

 まず、『敵対的買収とアクティビスト』で指摘されているように、日本の制度がアクティビストにとって活動しやすいものになっていることがあげられる。

 例えば、買収防衛策のひとつに

「ポイズン・ピル」

がある。直訳すると「毒薬」で、買収者の持ち株割合が一定の割合に達すると、すべての株主に対して大幅にディスカウントされた価格で優先株を取得する権利が得られるというものだ。これによって、買収者の持ち株の割合は大幅に希釈され、買収を断念せざるを得ない状況に追い込まれる。

 このポイズン・ピル、米国では取締役会の決定だけで行えるが、日本においては「必要性」と「相当性」の条件を満たすことが必要であり、特に株主が経済的損失を受けるようなものは認められないことが多い。

 さらに日本では米国と比べて少数株主の権利が非常に強い。株主提案を行うためのハードルも低く、臨時株主総会の招集請求権の行使要件も緩やかになっている。つまり、多くの人が持っている印象とは違って、日本は米国よりも

「株主を保護する傾向」

があり、アクティビストにとっては動きやすい制度になっているのだ。

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