ロシア人はなぜ「計画性」がないのか? ロシアトヨタ元社長が直面した旧社会主義国家の現実と、それを支えた奥田碩のリーダーシップ

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ロシアトヨタの社長を2004年から2009年まで務めた人物の苦闘の記録。ロシアとは、いったいどのような国家なのか。

ロシアトヨタ元社長による著作

2022年10月31日撮影、東京都内の自動車ショールームに掲げられたトヨタ自動車のロゴマーク(画像:AFP=時事)
2022年10月31日撮影、東京都内の自動車ショールームに掲げられたトヨタ自動車のロゴマーク(画像:AFP=時事)

 ロシアのウクライナ侵攻から1年がたった。

 ロシアの全面侵攻と、それに対するウクライナの粘り強い反撃など予想外の出来事が続いたが、ビジネスの現場でもロシアと西側の対立がここまで先鋭化し、多くの企業がロシアから撤退せざるを得なくなったことは予想外だっただろう。サンクトペテルブルクに工場を構えたトヨタ自動車も、2022年の9月にロシア事業からの撤退を表明している。

 今回紹介する西谷公明『ロシアトヨタ戦記』(中央公論新社)は、2004(平成16)年1月から2009年3月までロシアトヨタの社長を務めた人物の苦闘の記録だ。

「いまさら、なくなってしまった事業の立ち上げの記録を読む必要があるのか?」

と思う人もいるかもしれないが、以下のふたつの理由から、現在読んでも十分に面白いと思われる。

 まず、著者はトヨタの生え抜きではなく、早稲田大学の大学院から長銀総合研究所に入り、ウクライナの日本大使館で専門調査員をしていた人物である。そのため、本書は外部の人間がトヨタをどう見たかという記録にもなっている。

 面白さのもうひとつは、著者が直面したロシアという国の内実だ。ロシアは何事も計画通りに進まない国であり、多くの腐敗を抱える政治的な駆け引きが必要な国であり、そして何よりも広大な国だ。

 そこには日本では想像できないような苦労があるわけだが、そうした苦労を通してロシア社会のあり方が見えてくるのが本書の面白さである。

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