いすゞ自動車「ロシア撤退」にみる日本企業の独立性 “欧米の顔色”うかがい続ける姿勢と信用維持というバーター効果
いすゞロシア事業撤退
ロシアによるウクライナ侵攻から8月で1年半となる。しかし、事態の打開に向けた兆しは依然として見えない。ウクライナ軍は東部や南部で攻勢を仕掛けているが、ロシア軍をウクライナ領土外に追いやるほどの勢いではなく、ロシアも占領地は何が何でも死守する構えで応戦している。
そのようななか、大手トラックメーカーのいすゞ自動車(神奈川県横浜市)が7月14日、ロシア事業から撤退することを明らかにした。
ウクライナ戦争が長期化するなか、いすゞ自動車はロシアでの事業再開が見込めないとして、ロシアの大手自動車メーカーのソラーズに事業を譲渡したのち撤退するという。ソラーズがいすゞ自動車で働いていた現地の社員200人や工場を引き継ぐ形となった。
いすゞ自動車は2008年からロシア中部ウリヤノフスク州に自社工場を設け、2021年にはそこで3700台のトラックを生産したが、ロシアによるウクライナ侵攻直後の2022年3月から生産を停止していた。いすゞ自動車の世界全体のトラック生産でロシアは
「1%」
ほどで、今回の撤退による影響は限定的と見られる。
そして、いすゞ自動車と同じようにロシアでの現地生産を停止している三菱自動車(東京都港区)も、合弁相手の自動車メーカーのステランティスと撤退を視野に協議を進めているとされ、今後これが正式に決まれば、日本の大手自動車メーカーすべてがロシアでの自動車生産から撤退することになる。
ウクライナ侵攻直後から部品のサプライチェーン混乱などを理由に、自動車生産を停止していたトヨタは2022年9月、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクの生産工場を閉鎖した。
日産も同年10月、子会社であるロシア日産自動車製造会社の全株式をロシア国営の自動車・エンジン中央科学研究所(NAMI)に譲渡する形で撤退することを発表し、マツダも去11月、ソラーズとの合弁会社の株式を同社に1ユーロで譲渡する形でロシア事業から撤退すると表明した。