日本企業の「脱中国」はどこまで進むのか? 改正反スパイ法は7月施行、いま注目すべき「デリスキング」とは何か

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経済や貿易領域で米中対立が激しくなり、台湾情勢では有事を巡って緊張が高まっている。そのため、中国や台湾と強い関わりを持つ企業を中心に懸念の声が広がっている。

中国の改正反スパイ法が7月施行

石油タンカー(画像:写真AC)
石油タンカー(画像:写真AC)

 経済や貿易領域で米中対立が激しくなり、台湾情勢では有事を巡って緊張が高まっている。そのため、中国や台湾と強い関わりを持つ企業を中心に懸念の声が広がっている。

 仮に台湾有事となれば、

・台湾に駐在員を派遣する企業
・台湾に製造拠点を持つ企業
・台湾と取引がある企業

は極めて大きな影響を受ける。それだけでなく、日本は米国の軍事同盟国である以上、中国は対立軸で接していくことになり、日中関係の悪化にともない中国ビジネスにも悪影響が出てくる可能性が高い。

 7月1日から、中国の改正反スパイ法が施行される。2014年に施行された反スパイ法ではスパイ行為の定義が「国家機密の提供」だったが、改正法ではそれに加えて

「国家の安全と利益に関わる資料やデータ、文書や物品の提供や窃取」

と大幅に拡大。その他のスパイ行為など、定義の曖昧な表現が依然として残っており、中国当局によって恣意(しい)的に運用される懸念もある。

 中国情報機関トップの陳一新・国家安全相も6月、敵対勢力の浸透、破壊、転覆、分裂活動を抑え込むため、外国のスパイ機関による活動を厳しく取り締まる、と施行に強い意欲を示している。日中関係の悪化も相まって、同法に違反したとして拘束される邦人が増えることが懸念される。

台湾有事の大きな影響

2022年12月に実施された「国内回帰・国産回帰に関する企業の動向調査」(画像:帝国データバンク)
2022年12月に実施された「国内回帰・国産回帰に関する企業の動向調査」(画像:帝国データバンク)

 一方、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)や南アジア、中東などを結ぶ経済シーレーンは台湾南部のバシー海峡から台湾東部を通るが、有事になればシーレーンへの影響も避けられない。

 中国軍が台湾周辺の制空権や制海権を掌握してくる恐れがあり、台湾有事は日本の海上貿易全体に大きな影響を及ぼすことになる。

 さらには、南シナ海では中国による一方的な現状変更が長年続いており、人工島や軍事滑走路の建設が進んでいる。台湾有事が発生すればその影響は南シナ海にも当然及び、同海域における

・石油タンカー
・民間商船

の安全な航行が脅かされるリスクもある。

 インドネシアやフィリピンの島々を抜ける迂回路も想定されるが、コストも莫大(ばくだい)に膨れ上がり、今日では現実的な選択肢ではない。

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