半導体産業の危機 「台湾有事」がもたらす6000億ドルの被害リスクと、在留邦人の帰国問題
台湾社会で進む有事対策
![台湾と中国(画像:写真AC)](https://merkmal-biz.jp/wp-content/uploads/2023/05/230524_taiwan_01.jpg)
台湾情勢を巡って政治的緊張が続いている。
5月に入っても、例えばヘインズ米国家情報長官は議会上院軍事委員会の公聴会で、中国人民解放軍が台湾に侵攻して台湾での半導体生産が止まれば、世界経済は年間で6000億ドルから1兆ドルあまりの被害を受ける恐れがあると懸念を示した。
また、台湾国防部は11日、台湾周辺の空海域で10日に中国軍機12機、艦艇5隻の活動が目撃され、中国軍機の一部が中台中間線を越え、台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入したと発表した。
一方、台湾有事を巡る当事者間たちの緊張の長期化により、台湾社会でも有事を見据えた動きが進んでいる。
例えば、台湾では5月、退役した女性兵士を対象とした予備役訓練が開始された。有事が叫ばれるなか、台湾政府には男性だけでなく女性も活用することで戦略増強を拡充したい狙いがあると思われ、2023年1月に退役した女性兵が志願すれば予備役に登録することを初めて認められるようになった。
また、政治的な緊張との関係性はないと思われるが、台湾の航空当局は4月下旬、桃園国際空港に着陸する飛行機内に爆発物があるとの情報を受け、同空港の南滑走路を午前11時半から3時間にわたって閉鎖する事態があった。爆発物が置かれたというのは北京発の中国国際航空の航空機で、その後の調査で爆発物は見つからなかったが、3時間の滑走路閉鎖により混乱が生じた。
フィリピンに接近する米国の思惑
![ルソン島(画像:(C)Google)](https://merkmal-biz.jp/wp-content/uploads/2023/05/230524_taiwan_02.jpg)
一方、台湾有事で関与するかしないかを曖昧にすることで中国を抑止したい米国は、最近フィリピンとの軍事的結束を示している。
フィリピン政府は4月、新たに米軍が使用できる四つのフィリピン軍基地を発表し、その四つのうち三つはルソン島北東部カガヤン州やイサベラ州にある基地だとわかった。
フィリピン政府は米軍がそこを軍事拠点にすることを認めないとしているが、ルソン島と台湾はバシー海峡を挟んで距離が近く、台湾有事をにらんだ動きと見る安全保障専門家も少なくない。