いすゞ自動車「ロシア撤退」にみる日本企業の独立性 “欧米の顔色”うかがい続ける姿勢と信用維持というバーター効果

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いすゞ自動車が7月14日、ロシア事業から撤退することを明らかにした。ウクライナ戦争が長期化するなか、いすゞ自動車はロシアでの事業再開が見込めないとして、ロシアの大手自動車メーカーのソラーズに事業を譲渡したのち撤退する。

欧米企業に配慮する日本企業

プーチン大統領(画像:pixabay)
プーチン大統領(画像:pixabay)

 日本政府が最近、ロシアへの追加制裁として中古車も含めた乗用車の輸出規制を大幅に強化する方針であることが判明した。

 2022年4月から600万円を超える高級車のロシアへの輸出を禁止されてきたなか、新たに排気量1900ccを超えるガソリン車とディーゼル車、ハイブリッド車とプラグインハイブリッド車、電気自動車が禁輸対象となる。

 そういった関係悪化により、東京とモスクワを定期運行していたJALやアエロフロート(ロシアの航空会社)のフライトはなくなり、今でも欧州に行く際にはロシア上空が飛べないなど、実務面でもロシアでビジネスを継続することに大きな障害が生じるようになった。

 さらに、上述と関連するが、日本の大手自動車メーカーにおいても、レピュテーションリスク(企業の信用やブランド価値が低下し損失を被るリスク)を警戒する動きも広がったように思う。

 ロシアと欧米との対立が激化するなか、その欧米と足並みをそろえる日本の企業の間では、ロシアでビジネスを継続することへの焦りや警戒感が広がった。ロシア撤退では日本企業より欧米企業の動きの方が顕著になっているので、日本企業のなかには、

「まだロシアでビジネスを続けているのか」
「事業を停止しているだけでまた再開しようしている」

などと、欧米企業から疑念を抱かれることへの警戒感が広がっていった。

 これまで欧米企業と良好な関係を築き、ロシアでビジネスを継続する日本企業があったとすれば、ロシアによるウクライナ侵攻によって欧米企業との間で距離が生じることは避けたいのが本音だろう。

 ロシアからの撤退を表明した大手自動車メーカーによって、細かい部分の事情は異なるだろう。しかし、撤退発表のタイミングの差はあるにせよ、撤退を決断する時期やロシアを巡る国際関係、レピュテーションリスクなどといったものは大きく共通しているのではないだろうか。

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