いすゞ自動車「ロシア撤退」にみる日本企業の独立性 “欧米の顔色”うかがい続ける姿勢と信用維持というバーター効果
いすゞ自動車が7月14日、ロシア事業から撤退することを明らかにした。ウクライナ戦争が長期化するなか、いすゞ自動車はロシアでの事業再開が見込めないとして、ロシアの大手自動車メーカーのソラーズに事業を譲渡したのち撤退する。
長期化する「ロシアリスク」

このように、日本の大手自動車メーカーの脱ロシアがドミノ現象のように発表されたわけだが、時期は異なるにせよ、どの会社もかなり早い時期から撤退を模索していたのではないか。
なぜなら、ロシアによるウクライナ侵攻では早い時期から長期戦になる強い蓋然性(がいぜんせい。何が起こりうる確実さの度合い)があった。
ロシアと欧州が天然ガスなどエネルギー分野で相互依存関係にあるなか、ウクライナに侵攻すれば欧州や米国などから経済制裁を強化され、国内経済に一定のダメージが及ぶことは侵攻前から予見できたにも関わらず、プーチン大統領は経済よりも安全保障を優先する行動に出た。
そこから感じられるのは、ウクライナ戦争で相手に屈することはないというプーチン大統領の強い心情だ。その時点で、たとえロシア軍が劣勢になっても戦闘が停止されることはなく、企業にとっての“ロシアリスク”が長期化する強い蓋然性があったといえる。
また、ロシアを巡る国際関係も強い影響を与えたことは間違いない。周知のように、侵攻したロシアに対しては、米国や欧州、日本などが一斉にロシア制裁を強化し、それによって日露関係も一気に悪化することになった。