ウーブン・シティは“まちづくり”か 市長が「テーマパークになってはいけない」と話す背景
「プライバシー重視」はグーグルを意識か
同氏はまた、プライバシーを守ることも大切と付け加えた。グーグルがカナダのトロントに展開を進めたものの、プライバシー侵害に危機感を抱いた住民たちの反対で撤退になったスマートシティ「サイドウォークラボ」の計画を意識しているのだろう。
そのためにウーブン・シティでは、私有地のままでのまちづくりを予定している。これは以前から言ってきたことで、発表会でも「グーグルの計画は公共の土地であることがデメリットだった、今回は私有地であることが違う」と話していた。
私有地であれば新しいモビリティの実証実験や個人情報の収集などで、国や自治体のルールに縛られない独自のルールを定めることができることを、メリットとして考えているのだろう。
しかしながら、自治体の施策は住民への説明が義務付けられるのに対し、企業が保有する私有地での活動を説明するかどうかは企業の自由だ。それが高村市長とカフナーCEOの発表内容の具体性の差に現れていると感じた。
今日が対話のスタートの日という言葉もあったが、それがプロジェクトの発表から1年10か月後になった理由のひとつも、立場の違いがあると感じた。
会場からは、市民・行政・企業の対話がもっと必要、もっとオープンに情報公開してほしいなどの意見が出された。具体的には、多くの人が暮らすことから渋滞や治安が心配であり、住みにくいまちにならないかという声が寄せられた。
裾野市長は「閉ざされたテーマパークのようになってはいけない、市民にとっても利便性が向上するまちを目指したい」と語っていたが、裏を返せばテーマパーク化する危険性を感じての発言だったと思っている。
今回は市長主催の会であり、同氏が出席したことは理解できるが、今後は日本で生まれ育った人を責任者に据え、できれば裾野市に住んでもらい、住民との交流を深めてほしい。そうすればウーブン・シティは、真のまちとして育っていくだろう。