路面電車に乗るとなぜ「ホッとする」のか? 心理学者が語る納得の理由
路面電車が見直されつつある。その背景には何があるのか。心理学の目線で迫る。
「移動体験」の理由

安心感の次は「移動体験」だ。
路面電車がない町に住んでいる人にとって、路面電車は特別な「移動体験」を提供してくれる乗り物でもある。観覧車のように、あれに乗って行ったらどんな景色が見えるだろうと想像するだけでも楽しい。
また、路面電車はその町で生活する人々の暮らしに溶け込んだ乗り物だ。その町の人と同じように
「料金を払い」
「席に座り」
「景色を眺めれば」
自分もその町の人と同じ景色のなかに溶け込んでいく。
市内観光のバスなどは多言語解説つきで主要な観光スポットを巡ってくれるので、時間のない旅行者にはありがたい存在かもしれない。しかし、市内観光バスは、その町に住む人とは別のレイヤーの上を動いており、その町に住む人と触れ合うことはない。
考え方は人それぞれだとは思うが、やはり私(島崎敢、心理学者)は、その町の人と体験や空間を共有することが旅の醍醐味(だいごみ)ではないか。そして路面電車はそういう共有体験を気軽に提供してくれる。
もちろん、地下鉄やバスでも同じことができなくはないが、路面電車はその町の景色を特徴づけている乗り物である。旅の写真やガイドブックなどを見返したとき、路面電車の移動体験は他の交通手段による移動体験より鮮やかに思い出されるのではないだろうか。