静岡県は“東西155km”もあるのに、なぜ新幹線「のぞみ」が停車しないのか
煮えたぎる「JR東海に対する不満」

このような歴史が示すのは、静岡県とJR東海の関係の複雑さだ。
リニア中央新幹線を巡り、川勝平太県知事とJR東海の応酬は度々報じられているのは、皆さんも報道でご存じだろう。報道では、川勝知事があたかもエキセントリックに振舞っているように見られがちだが、実際のところは、静岡県の代々の県知事がそうならざるを得ないほど、
「新幹線に対する不満」
が溜まっているということである。単に「大井川の水問題」がどうこうといった単純な話ではないのだ。
2025年までに、リニア中央新幹線を自己負担で開業するとJR東海が示したのは、2008(平成20)年である。JR東海はこのとき、大都市間輸送がリニア中央新幹線に移るため、静岡県の新幹線停車駅は増加し、東京まで通勤できるようになる、といった未来像を明らかにしている。ところが、静岡県民はこう受け止めた。
「17年後までこのままなのか」
川勝県知事の強硬な態度が県内で支持される背景には、
「自分たちが軽視されている」
ことへの怒りもある。JR東海からしてみれば「軽視しているわけないだろう」と反論したいところだろうが、筆者(昼間たかし、ルポライター)のように外野から問題をウォッチしている人間にとっては、残念ながら軽視の感があるのは否めない。
政府は2023年夏にも、リニア中央新幹線開業後の静岡県内における東海道新幹線停車数の増加調査をまとめる方針を示している。ところが、当のJR東海は開業後、「のぞみ」が運行本数の半分程度になると2010年に言及して以来、ダイヤに全く言及していないのだ。
そんなこんなで、静岡県は新幹線を止めることに強くこだわっているのである。ご理解いただけただろうか。
さて、ここからが肝心だ。県の望み通りになったら、地域は本当に発展するだろうか。少なくとも、急に利用者が増えるとは考えられない。むしろ「ストロー効果」(地域の拠点となっていた小都市が経路上の大都市の経済圏に取り込まれ、ヒト・モノ・カネがより求心力のある大都市に吸い取られる現象)が起きて、県の経済に影響を及ぼす可能性もある。
ただ、前述のような屈辱の歴史をふまえれば、もう、静岡と浜松に1時間に1本くらい「のぞみ」を止めてもいいのではと、つい同情してしまう。