静岡県は“東西155km”もあるのに、なぜ新幹線「のぞみ」が停車しないのか
JR東海vs石川県知事
このダイヤ案は、新幹線品川駅開業(2003年10月)を前提として「のぞみ」の静岡駅・熱海駅停車を実現するものだった。なかでも、静岡駅へ停車本数は毎時7本となっていた。
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これらの提案によって、静岡県とJR東海の関係は加速度的に悪化した。この問題を取り上げた『朝日新聞』2003年3月18日付の記事には、JR東海の
「のぞみを欲しがるだけでは地域エゴ」
「東京~新大阪をより早く結ぶという視点がまったくなく、乗り換えも不便。静岡以外の利用者にはマイナスでしかない」
という、怒りのコメントが掲載されている。一方、石川県知事も
「JRはサービスが手抜きだ」
「金もうけに熱心で、公共事業者とは思えない」
と、これまた歯に衣着せない言葉を発している。
静岡県の大胆な主張
また、静岡県は
・静岡県が静岡空港(牧之原市)に新幹線新駅を建設する
・東静岡駅を新幹線停車駅とする
といった壮大な要望も出していた。前者はともかく、後者はよく理解できない。なぜなら、東静岡駅は静岡駅(東海道本線)の
「隣駅」
だからである。その主張の背景はこうだ。
当時、静岡市は清水市(現・静岡市清水区)との合併(2003年)を前に、合併後の市庁舎を東静岡駅前に建設する案を検討していた。人口約70万人の大都市の市庁舎を作るのだから、その前に新幹線を止めてほしいというわけである。
合併前の2001(平成13)年12月には、清水市の宮城島弘正市長(当時)が市議会で
「東静岡駅へのひかりとのぞみの停車化には市民の期待も大きく、何としても実現させたい」
と発言している。はたからは荒唐無稽な提案に見えるが、静岡県内では少なくとも、静岡駅の停車数増加とともに大真面目に主張されていた。結局、新幹線通行税は導入されなかったものの、静岡県とJR東海の火種はくすぶり続けた。
2003年と2007年にダイヤ改正が行われ、県内駅への「ひかり」停車数は増加したが、静岡県はその度に「のぞみ」が停車しないことについて不満の声を上げていた。