なんと総勢600両 台湾鉄路の新型特急「EMU3000型」大量導入、その背景にあった深刻すぎる現地問題とは
混雑が日常化していた東部幹線

旅行などで台北方面から東海岸方面へ向かおうとした際、
「第一希望の特急列車が満席だった」
という経験がある人も居るのではないだろうか。新型車両大量導入の最も大きな理由といえるのが、こうした利用客増による混雑問題を解決するためだ。
台湾の西部では2007年に台湾高速鉄路(台湾新幹線)が開通。高速道路の延伸もあって在来線である台湾鉄路西部幹線の自強号利用客は減少し、従来型の自強号車両には余剰車が生まれることが見込まれた。
そうしたなか、台北と台湾東部の花蓮を結ぶ宜蘭線・北廻線(東部幹線北段)では、2005年までに複線電化・高速化が完成。それにともない、これまで西部幹線のみで運用されてきた電気機関車けん引の客車自強号(通称:PP自強号、E1000型機関車・PPT1000型客車など)をはじめ、2007年からは振子式電車自強号「TEMU1000型」(愛称:太魯閣号、日立製作所製)、そして2012年からは車体傾斜式電車自強号「TEMU2000型」(愛称:普悠瑪号、日本車輌製)が相次いで投入され、所要時間が大幅に短縮された。これによって利用客も2010年代半ばまで増加の一途をたどった。
一方で、台北から花蓮間は従来のPP自強号やディーゼル自強号で約2時間半~3時間かかるところが、太魯閣号や普悠瑪号では同料金(指定席の場合)で最速約1時間50分と大幅に所要時間が異なり、また車内の快適性も違うため、乗客は太魯閣号・普悠瑪号に集中することとなった。
しかし、太魯閣号のTEMU1000型と普悠瑪号のTEMU2000型はいずれも1編成8両の振子式・車体傾斜式電車であり、車体の傾斜や独特の揺れに慣れない乗客も多いことから当初は全車指定席で、「自願無座」(=立席)での乗車を認めていなかった(2019年より一部で無座票の発売を開始)。そのため、さらに輸送力の大きな自強号電車の導入が求められていたのだ。
EMU3000型は、TEMU1000型・TEMU2000型よりも長い12両編成。大きな輸送力で混雑緩和に一役買うこととなっている。