田中角栄『日本列島改造論』のジレンマ ローカル線を苦境に追い込んだ道路建設に見る、真に豊かな日本とは

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田中角栄『日本列島改造論』が2023年3月、復刻した。この本は、鉄道や道路、物流といったものに関心を持つ人はぜひ読むべき本である。

新内閣を襲ったオイルショック

オイルショックのイメージ(画像:写真AC)
オイルショックのイメージ(画像:写真AC)

 だが、田中角栄が首相になってから、開発が進むということで各地の地価が上昇した。その上、1973(昭和48)年にはオイルショックがあり、「狂乱物価」ともいえるほどの物価上昇が起こった。

 インフレ対策のために政敵の福田赳夫を大蔵大臣にし、列島改造は封印した。給料が上がっている時代ではあったものの、地価や物価がそれ以上に上がるという事態になり、列島改造はいったん立ち止まることになった。

 鉄道では、国鉄改革にともない整備新幹線計画は進まなかった。また、国鉄の財政はひっ迫、分割民営化やむなしといった状態になり、多くのローカル線は第三セクターになったり、廃止されたりした。

 一方、道路は時間はかかったものの高速道路網が各地にできるだけではなく、田中角栄の主張する通りに道路が完成していった。

列島改造の副作用とその後の困難

国会議事堂(画像:写真AC)
国会議事堂(画像:写真AC)

 田中角栄は、鉄道も道路も重要なインフラと考えていた。しかし、鉄道についてはその後の国鉄分割民営化、大都市部以外での利用者減にともなう経営難、貨物鉄道の衰退という状況になってしまったため、都市と地方の不均衡はいっそう目立つようになってきた。

 高速道路の整備は進むが、新幹線の整備には時間がかかっている。道路には「道路族」という族議員が以前はおり、この議員たちが道路整備に税金を積極的に投じさせた。しかし鉄道には「鉄道族」という族議員はおらず、整備新幹線も常に財源問題との戦いで、田中角栄の構想した新幹線網ができる見込みはないという状況だ。

 現実には、道路と鉄道を両方つくるだけの体力はこの国にはなく、高速道路や高規格道路の発展で、本当は高速化を進めるべきだった地方の鉄道は衰退し、利用者も少なくなり廃線の話が出ている。

 近年、利用者が少ないため廃線の話が出てくる路線の近くには、高規格の道路があったり、その建設計画があったりする。道路を充実させた結果、ローカル線の充実は不可能になり、苦境に追い込まれて廃線の話が出るという状況になっているのだ。

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