田中角栄『日本列島改造論』のジレンマ ローカル線を苦境に追い込んだ道路建設に見る、真に豊かな日本とは

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田中角栄『日本列島改造論』が2023年3月、復刻した。この本は、鉄道や道路、物流といったものに関心を持つ人はぜひ読むべき本である。

田中角栄の交通政策

田中角栄の生家(画像:(C)Google)
田中角栄の生家(画像:(C)Google)

 田中角栄の基本的な考え方は

・都市部の工業を地方に移転する
・都市と地方や地方都市間を鉄道や道路でつなぐ
・人の行き来を活発にして経済を活性化させる

ことで、人々の生活を豊かにするというものだ。1級建築士でもある田中角栄は土木や建築の知識を生かし、国土をどうするのかという課題に取り組んだ。

 新幹線の建設促進は有名ではあるが、在来線の能力アップも主張している。複線電化区間を約1万kmとし、場所によっては複々線化も実現する。レールを耐久性、安定性の高いものにして列車のスピードアップをはかると考えていた。

地方鉄道の有用性を解説

ローカル線(画像:写真AC)
ローカル線(画像:写真AC)

 地方交通線に関しては、

「私企業と同じ物差しで国鉄の赤字を論じ、再建を語るべきではない」

として、工業再配置を通じて全国総合開発を行う時代の地方鉄道については改めて評価すべきであり、北海道開拓の歴史に触れ、

「地域開発に果す先導的な役割はきわめて大きい」

としている。

 その上で、

「赤字線の撤去によって地域の産業が衰え、人口が都市に流出すれば過密、過疎は一段と激しくなり、その鉄道の赤字額をはるかに超える国家的な損失を招く恐れがある」

と訴えている。豪雪地帯では、道路に置き換えた場合の除雪費用も大きい。その上で、地方路線の赤字は、国鉄の赤字の1割にすぎないことを指摘する。

 一方、道路についてはどうか。高速道路を各地につくることはよく知られているが、その高速道路のネットワークを骨格にして末端の生活道路まで、秩序ある体系を確立させるとしている。

・高速道路
・幹線道路
・生活道路

と、道路の機能をはっきりさせ、

・重量物専用
・バス専用
・空港や港湾向けの道路

など、機能別の道路をつくることを主張している。

 また、鉄道・道路・港湾を一体的にとらえて整備し、そのために自動車重量税による収入を鉄道建設に充当することを提言している。

 充実した公共インフラがこの国を発展させ、都市と地方の格差をなくすというのが、田中角栄の構想であった。陸上交通については、鉄道も道路も、というのである。

 この構想を引っ提げて自民党総裁選に勝ち国会で首相の指名を受け、組閣し政策を実行しようとした。

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